黒猫6 ページ8
「なっ……」
その見覚えのあるシルエットをみて驚きで声を洩らす。
首領に呼ばれてのこのこと参上すると、私と中也が血眼になって探している『黒猫』が首領の横にピンと背筋を伸ばして立っていた。
横目でちらりと中也を確認すると、案の定彼も驚きで目を見開いている。
彼女はどこか嘲るような薄い笑みを浮かべて此方を見つめていた。
「首領、その女は………」
私が思わず訊ねると、首領にはニッと笑みを象り彼女の方を細い手で示した。
「この女性は室生Aくんだ。そして、お察しの通り君たちに捜索依頼を出していた『黒猫』。今日からポートマフィアの一員として務めるようになった。」
「え、は、はぁ…。了解です。」
思いがけないことを云われ、私としたことが間抜けな返事をしてしまう。慌てて取り繕うがあまり効果はないだろう。
「早速今日から任務についてもらうんだが、太宰くん、中也くん。今回の任務は3人で遂行してくれたまえ。さ、室生くん、彼方に。」
「うっふふ、ご機嫌よう。改めまして、室生Aですわ。ええと…あの夜ぶりかしら?是非お手柔らかに宜しくお願いしますね?」
くす々と笑い声を含みながら一気に黒猫は喋る。
物腰も、言葉遣いも柔らかだがどこか馬鹿にされているのが薄ら伝わる。まァ当然と云えば当然なのかもしれない。二人がかりでかかってこの女を捕まえられなかったのだから。
それにしたって馬鹿にされるのは不本意で腹立たしい限りだが、首領の前。グッと怒りを堪え手短に挨拶をする。
「私は太宰。」
「俺は中也だ。」
形だけとはいえ挨拶をしているというのにこの女、そっぽ向いて髪をクルクルと指で弄んでいる。
不埒な態度に眉を顰めていると、中也が苛々とした声で不満を洩らす。
「上手くやれる気がしねェ」
その言葉に黒猫は指に絡めて遊んでいた艶やかな黒髪をするりと外し、首を少し傾げて態とらしいまでに楽しそうな声をだす
「あら、残念。私は仲良くしたいのですよ?楽しみすぎて
また思いがけないことを云われ、一瞬面食らう。
ポートマフィアの構成員の名前を全員覚えた?そんな馬鹿な、と笑い飛ばしてしまいたいけれどそんな嘘をつくメリットなんてない。
ちらりと黒猫を見ると月のように金色の目がニヤニヤと私を見つめていた。
「仲良くしてくださいね、ダザイオサムさん?」
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時