黒猫3 ページ5
「…で、君たちは取り逃したって訳かい?」
首領の声が冷たく響く。
鋭利な声は、其の場にいる全ての者の背筋を伸ばさせた。
「…はい。そうです。」
「…然も、君たちが連れていった黒服は全員死亡、または重傷と来たか。ふぅむ、痛手だねェ。そう思わないかね、中也くん?」
名前を呼ばれた中也はぴくりと指先を動かした後、そうです、と短く答えた。
首領は怒っている、のだろうか。
中也は莫迦だから完璧にそう思っているのだけれど、何故か少しだけ違う空気を感じる。
「ふむ…。良し、決めた。彼女をポートマフィアに勧誘しよう」
「…は?」
間抜けな声が漏れる。
真逆勧誘とは…
そうか、怒りの他に高揚が織り交ざっていたのか。
油断していたとは云え、我ら双黒を出し抜いた女だ。興味を持たない訳が無い。
「お言葉ですがあの女が命令を聞く口には見えねェです」
中也が尚も未だ信じれない、と云った声で異論を唱える。
…其れでも、否、其れだからこそ首領は連れてこさそうとするだろう。
「…中也くん。私は如何しようか、と訊ねた訳じゃない。彼女を此処に連れてきなさい。」
死んだような目で笑みを型どり乍ら首領は冷たく云い放った。
すんません、と伏せ目がちに答えた後、中也は黙りこくって仕舞った。
「…解りました。今すぐ其方の件に取り掛かるよう部下に指示を出します。」
礼をして部屋を出ようと早足で去ろうとすると、首領がもう一声。
「調べるのは部下を使っても良いけれど、現場に向かうのは太宰くんと中也くん二人きりでね。なに、一寸した
「………はい。」
礼を再びしてから扉の向こうに消える。
…最悪だ。
部下も無しに蛞蝓と2人で捜索に?
最悪だ。
「…云っとくけどな、俺も厭なんだからな」
「解ってるよ」
げんなりとした気持ちを抑え込み、部下に連絡をする。
インカム越しに同じ言葉を繰り返す。
「「コードネーム『黒猫』の捜索を開始しろ。最優先事項だ。」」
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時