黒猫20 ページ22
「解ってくれて嬉しい。此の世界にある
黒猫はコロコロと笑った。
殆ど意味をなさない、無駄な装飾がたっぷり施された日傘を持って、戦場に揺れる。
「……まあ!可愛らしい鼠。こんな処に隠れていらしたのね」
黒猫が大きなな収納場所を開けて楽しそうに声を上げた。
ちらりと見やると、其処には見覚えのある顔の男が怯えた顔で縮こまっていた。
成程、今回の任務の目的は裏切り者の排除だったのだ。
「す、すみませ、すみません!お許しを、お許しを、仕方なかったんです!」
裏切った鼠が叫ぶようにして命乞いをする。
つまらない言葉ばかりを吐いていて、腹が立つのすら無駄に感じた。
私は直ぐに銃を構えたが、黒猫は縮こまっていた男の目線に合わせるように屈んで話を聞いている。
「あら、そうだったんですね。家族を人質に……お可哀想に」
「そ、そうなんです!家族のために…仕方なくて…!」
「本当に、お可哀想。天涯孤独なのに家族の幻覚まで見てしまうなんて」
黒猫がそう呟くと、男は呆気に取られたように目を見開く。
どうして、それを。
そう思っているのが手に取るように解った。
「え……」
「違いまして?貴方のご両親は何方もマフィアの抗争に巻き込まれて死亡、ご祖父母とは面識がなく妻も子供も居ない……間違いがあれば訂正してくださいまし」
「……うるせぇ!死ね!」
男は黒猫に向かって銃を撃つ。
至近距離で、避ける隙も助ける隙もない。黒猫の身体を小さな鉛玉が貫いて、腹と口から血が零れ落ちた。
「は、はは!黒猫をやった!」
「黒猫!」
私も思わず声を上げる。
血がぽたぽたと音を立て、地面に円を作っているのを確認して死んでしまうかもしれない、と思った。
「おいおい、大したことねぇな!俺の事嘗めてるからだよ!」
「一寸黙り給えよ」
私が男の腹を撃つと、ぐ、と苦しそうな声を上げる。放っておくとそのうち命を落とす。
私は撃たれた黒猫に近付こうとすると、黒猫は無言で倉庫から飛び出した。
「おい、黒猫!」
なんだ、彼奴。
私は溜息をついて、頭をぽりぽりと掻く。
動く余裕があるとは思えないが、何を考えているのだろう。
追いかけようとすると、猫の鳴き声が何処からか聞こえた。
コツ、とヒールの音が響く。
「あら、厭だ」
其処には、新品みたいな黒猫が立っていた。
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時