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黒猫19 ページ21

「……おい」


ここ最近で一番低い声が出た。

掠める弾丸を首を傾げながら避けて、じろりと黒猫を睨む。


「何か?」


黒猫はゆらゆらと揺れながら雨のように襲いかかる弾丸を避けていた。

口元に浮かべた笑みが胡散臭くて、私は大きな溜息をつく。


「地雷撤去だと云っていたのに何時ものくだらない抗争じゃあないか」

「あら、くだらないなんて云ったら可哀想。みぃんな命を懸けて闘っているのに」



くす、と笑いながら黒猫はぴょんと跳び、闘う黒服の後ろに立つ。

まるで抱きしめるように背中から黒服の銃を支えて、耳元で囁いている。


「下手。こうやって手を添えて…ほら、善く相手を見てくださいな。そう、そして引金を……」

「ありがとうございます…」

「きっともっとお上手になるわ」



室生は数人に銃の手ほどきをして、それからふらっとにまた私の元へ返ってきた。


「飽きちゃったわ」

「それは何より」

「嘘を吐いたって怒っているの?」

「嗚呼。もっとも嘘を吐いていなくても君には何時も苛々しているけれどね」



室生は、まあ、なんて言いながら顔は笑みをかたどっていたので、負けじと自分も笑みを浮かべた。

お互いニコニコとしながら貶しあっている様は、傍から見ると少し異様だろう。



「地雷撤去」


そう言いながら室生は敵の集団を指さした。

「あれらの人間も一種の地雷ですのよ。早めに消さないときっと何時か爆発してしまうわ」

「……成程ね。君が屁理屈が上手いということだけは理解した」

「酷い」


室生はころころと笑って、唐突に私に常に持ち歩いている真っ黒の日傘を此方に投げた。

条件反射で受け取ると、室生は続けて喋る。

「治さんが退屈そうですし、お片付けして来ますわ。それ、持っていてくださいまし」



そう言いながら、彼女は抗争の真っ最中の倉庫に向かって歩き出した。そっと、ワンピースの裾を揺らしながら猫のように闇に溶け込む。


数秒後、荒々しい物音や銃声がけたたましく鳴り響いた。


音が鳴り止み、しばらくすると黒猫がするりと闇から戻ってきた。


室生の身体は胸から腹の位置にかけて返り血らしきものが黒く染みている。



「お終いかい?」
「さァ?治さんの目で確認してくださいな」
「面倒だね」




そう口にしながらも私は確認の為に先程まで戦場だった場所に出向く。

サ、と小さな音。そして短刀を振り回す残党。


私はそれを避けて銃で撃つ。

成程


「確かに、ある種の地雷みたいだ」

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設定タグ:文スト , 太宰治 , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時

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