黒猫1 ページ3
張り詰めた静けさの中、其の女は月を背に立っていた。
浮き上がるシルエットは妖しげな雰囲気を醸し出し、其処にいる皆は息を呑んだ。
恐ろしさと、美しさ故に。
静かな夜を打ち破るように彼女は言葉を発した。
綺麗で、何処か艶っぽくて、其れでいた済ました声が鼓膜を刺激する。
「皆様、そんな豆鉄砲じゃあ何時まで経っても私を仕留められませんわよ____もっと、本気でなさったら?」
くす々と云う笑い声が場を支配する。
其の笑い声は静かに、でも確かに私たちの気持ちを苛立たせた。
「如何なさったの?もうお遊戯はお仕舞い?ふふ、なら私から行かせて頂いても宜しくて?」
そう云う方が速いか、彼女が私の周りの部下の命を奪うのが速いか。
彼女が口を閉ざした頃に、私の付近にいた部下の3分の1は短刀が至る所に刺さり戦闘不能に陥っていた。
絶命も、時間の問題だ。
悠々と薄い笑みを浮かべる彼女を冷たい眼で見つめ、左手で指を指す。
其れを合図に部下が一斉に銃声を轟かせた。銃弾の雨、雨、雨。
「あら、そんな玩具効かないと教えて差し上げたのに…。嫌だわ、私莫迦は嫌いなの。」
彼女は血飛沫をあげて倒れるどころか、全てを避けた挙句私の部下の1人から銃を取り上げ、此方へ銃口を向けていた。
「私には効かないけれど、貴方達には効くのですよね?」
そう云い乍ら彼女は指に力を軽く入れ、的確に私の部下の命を奪っていった。
残すは私1人。
「嗚呼、此れは俗に云う絶体絶命ってやつかい?」
口角を吊り上げ乍ら私は銃口を彼女に向ける。
彼女もまた、私に銃口を向けていた。
私と彼女の一騎打ち________
くすりと彼女が笑みを零した刹那、『あの影』が月夜に舞った。
私は、此の時を待っていた。
衝撃音と共に土煙が舞い上がり、続いて荒々しい声。
「おい、手前。よくもマフィアの敷地を荒らしてくれたなァ?」
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時