黒猫15 ページ17
ある日。
僕は室生Aという女に連れられて二人きりで任務に向かっていた。
ふわふわしとドレスちっくな服を纏い、日も照っていないのに日傘などをさしている
「…何故僕が貴様みたいな女に指図されねばならぬのだ」
「治さんが善いッて云ったンですもの、お付き合いくださいな」
厭に高いこえでくす々と笑う室生に苛々が募る。
何故太宰さんは僕をこんな女の云うことを聞けなんて云ったのだろう。
考えても、戦闘向きな服装でもなく日傘で片手は塞がっている、莫迦みたいに顔をニヤつかせているだけの女に『何か』があるとは思えなかった
隙を見て羅生門で喰いちぎってやる、僕がこの女より優れていると太宰さんに証明するのだ
「ほら、着きましたわ。貴方が戦果をあげるために黒服は連れてきておりませんから暴れてなさい」
軽やかな歌うようで、でも何処か有無を言わさないその声に僕の背筋は少し伸びる
言われたその場所は、なんの変哲もない町工場だった。無辜の民が細々と経営しているような小さな町工場。
今も稼働しているのか喧しい音が耳に入る。
「…手は出すな。僕一人でやる」
「言われなくても出しませんわ。さ、頑張ってくださいまし」
異能力_羅生門___
僕の衣服が蠢き、黒衣の獣が唸り声をあげる。
「……素敵」
羅生門が扉ごと食い破り、激しい騒音と埃が立ち込めた
中の人間が一瞬息を呑んだように目を見開く。
「なっ…」
ようやく事態を飲み込め、叫び声をあげようとする輩から順に貪っていく。
鮮血がほとばしり、羅生門が赤黒く濡れた。
そこからは、もう一瞬。
そもそも町工場の人間が僕にどうこう出来るわけないのだ。
全ての人間が事切れたのを確認してから工場の外で待つ室生に近寄る。
__突如、銃声が僕の鼓膜を刺激した。
「なっ、にをする貴様!」
銃声の原因は室生が引いた引き金。僕の方にしっかりと銃口を向けて笑っていた。
不完全ながらも空間断裂のおかげで僕に傷は無い。
…此奴は僕に対してなんの躊躇もなく引き金を引きニコニコと笑っているのだ。下手したら、死んでいた
「貴様、謀反か」
コツコツと高いヒールを小気味よくならしながら近寄る室生。
殺意もなければなんの感情もないような笑みにぞくりと背筋が経った
そして僕の方に銃口を向け……銃弾は、僕の顔を掠め生き延びていた町工場の人間を貫く
「気を抜かない。…基本ですわ、次は気をつけましょうね」
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時