黒猫9 ページ11
扉から出てきた彼女は、それはもう澄ました顔をしていた。
パンパン、と手を軽く払い此方に向かって微笑む黒猫。
「如何しました?はやく、私の死体回収と組織の後始末にお向かいになられたら?」
優しい笑みと、此方に対する煽り。うーん、腹が立つ。
「黙れ。入ってもいいかい?」
「好きにして頂いて構いませんわ」
その言葉を聞き、私と中也は中に突入する。
基地の中を見て愕然とした。
なんだ此処は。
机はひっくり返り血は八方に飛び散り、恐怖の中に死んでいったであろう表情をした『裏切り者』が散乱した部屋。
「ハッ…こいつはひでぇや」
「彼女の異能が掴めないな。最初は猫にでも化ける異能かと思っていたが…此の様子だと私の予想は外れたみたいだ」
猫だけでここまで荒らせるとは思えない。
猫ではなくネコ科の動物…例えばライオンなどに変幻するのか?或いはもっと戦闘的な、全然違う異能…。
「用はお済みで?今宵は素敵な夜ですね。それでは、ご機嫌よう。」
扉の向こうから彼女が月を背に語りかける。
目だけが猫のようにキラリと光っていた。
彼女はぺこりとお辞儀をすると、するりと夜闇に溶けて何処かへ消えていった
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黒と白が基調のドレスのような洋服。
厭に丸みを帯びていて真っ黒でレースがあしらわれた洒落た日傘。
ペロリと舌舐めずりした時に見える真っ赤な舌。
極めつけは…金色に光る美しい瞳。
彼女を見たものは口を揃えて云うだろう。
『黒猫のようだ』と。
飄々としていて丁寧で、何処か冷めた瞳をしていて。
彼女は任務を終えた後、大きな家か施設のような場所に入り暫くするとそこをあとにし、また似たような場所へ行き、あとにし…と繰り返していた。
4回ほど繰り返すと、彼女を溶かしていた闇は薄れてきた。そろそろ、夜が明ける。
「…そろそろ私も、戻らないと」
言い聞かせるように小さく呟き、彼女は文字通りそこからふっ、と消えた。
まるで、何もなかったかのように。
猫の鳴き声すら聞こえない、静かな朝だった。
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閲覧ありがとうございます、作者です。
不定期更新ですが沢山の人に読んで頂けてとても幸せです。
欲を言うと、お星様を光らせてお気に入り登録してくれると嬉しいです。
夢主ちゃんにもあっと驚く秘密を考えてます、楽しみにして頂けると幸いです
毎回文字数ギリギリで言う機会なかったので言わせて頂きました
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時