26話 ページ29
射撃場から出ると、見計らったようににっこりと笑う森鴎外がいた。
「……なんだ?」
「なんだ、とは酷いねェ。聞きに来たんだよ、私の可愛い部下たちのことを」
森は胡散臭い笑みを浮かべて私の顔を覗き込む。
鬱陶しいので手で軽く払い、私はあからさまに溜息をついた。
「はぁ…3人とも流石、といった所だ。森のお墨付きなだけある」
「そう、それは何より。織田くんも使えそうかい?」
「……?嗚呼、射撃の腕がピカイチだ。」
へぇ、と森は顔を歪めた。笑みを浮かべているように見えるが、瞳の奥は鳥肌か立ちそうなほど冷たいものだった。
「……他の奴らも期待出来そうだな。じゃあ」
「嗚呼、引き留めて悪かったね」
私は射撃場を足早に去った。最後に振り返ると、森は射撃の的を、じっとりと見つめていた。
**
「お、涙香じゃねェか。うろうろしてて大丈夫なのか?」
低い、少し荒っぽい声が耳に入る。
私は背筋を伸ばして、振り返る。
そこには、中原中也がにっと笑って立っていた。
「中也か。うろうろだなんて、失礼だな。一応仕事だよ」
「仕事……?嗚呼、首領からのか。調子は如何だ?」
「まずまずってとこだ。……嗚呼、そうだ。中也、お前の実力はどの程度だ?」
首を傾げて、中也を見つめる。透き通った、それでいてどこまでも深い蒼の瞳がうつくしかった。
彼は伸びた橙の髪の毛先を指で摘むその動作すら、様になる。
「実力、だァ?」
「嗚呼」
その返事に中也はにやりと口角を上げる。
中也は私の肩に手を伸ばし、挑発的に笑んだ。
「──異能力、汚れちまった悲しみに」
中也の声が響き、私の体がふわと軽くなった。
その事実に驚きよろめいても、身体が地面に当たることは無い。ふわ、と浮いたままだ。
「なっ、」
中也は私の腰に手を当てぐいと引き上げる。
唐突に失われた距離感に、私の胸は意思に関わらず高鳴った。
「…悪ぃな、ちょっときついぞ」
この状況に気を取られすぎて、中也の言葉の訳も分からぬまま、こくりと頷く。
そして、次の瞬間地面にのめり込みそうな程の重い圧を感じる。
痛い、というよりどうしようもないこの圧力に、ぐ、と声が漏れた。
立っていることもままならず私が崩れ落ちると、ふ、とまた私の体は軽くなった。
「___俺の実力?」
彼の言葉に、顔を上げる。
「最強だよ」
自信たっぷりに笑うその姿に、私はただ息を呑むだけだった。
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まるてん(プロフ) - 鯖の味噌煮さん» こちらこそコメントありがとうございます。更新出来ると言いつつ遅くなってしまい申し訳ありませんT_T この作品を好きでいてくれる方がいるのだと実感でき本当に励まされます。ぜひこれからも読んで頂けると幸いです…! (2021年7月15日 12時) (レス) id: 1c66422c77 (このIDを非表示/違反報告)
鯖の味噌煮(プロフ) - 更新ありがとう御座います!本当に素敵な作品ですのでどうか無理なさらずお書き下さい。いつまでも気長に楽しみにしております! (2021年7月15日 0時) (レス) id: 2d6934bde3 (このIDを非表示/違反報告)
まるてん(プロフ) - 鯖の味噌煮さん» わ!この作品を好きでいてくれる方がいてとても嬉しいです…!コメントとても励みになります!更新頑張ります、ありがとございました! (2021年3月10日 10時) (レス) id: 1c66422c77 (このIDを非表示/違反報告)
鯖の味噌煮(プロフ) - お気に入りに入れ何度も読み返していたのでとても嬉しいです!!更新楽しみにしています! (2021年3月10日 8時) (レス) id: 2d6934bde3 (このIDを非表示/違反報告)
まるてん(プロフ) - からすさん» あ、そうです…!そこに気付いて貰えて嬉しいです…!有難うございます。からすさんも、体調にお気を付けて…! (2018年1月12日 23時) (レス) id: 00d4fdc1e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるてん x他2人 | 作成日時:2017年8月3日 15時