CASE.1-1「偶然の産物」 ページ3
事件から数ヶ月。
人の噂も七十五日とはよく言ったもので、
ゴシップなど、メディアに散々取り上げられた飯田リンタロウの話題も、徐々に世間から薄れつつあった。
だけど、僕はそんな風に簡単には忘れられなかった。
「先輩……お久しぶりです。」
先輩から、返事はもちろんない。
ただ目の前に広がるのは清掃の行き届いた墓石、綺麗に飾られた花。
僕は久々に訪れたが、相変わらず"あの子"が手を施している結果なのだろう。
「今日は一人で来ました。先輩に、聞いてほしい話があって……。｣
それから僕は、ぽつりぽつりと事件に関することを呟く。
誰もいない墓地に、僕の声だけが風に乗る。
「もしここに先輩がいれば……彼にもっと違う道を示せたかもしれない。｣
先輩なら、どんな風に声をかけてあげられたのか。
胸の奥にずっと残っているわだかまりを吐き出すように、返ってくるはずの無い返事をただただ求めて。
事件のあらましと僕が本当にしたかったことを伝え、地面から顔を出すタンポポの綿毛に視線を落とす。
「僕の正義は間違っていたのでしょうか。｣
本当にこれで正しかったのか。
自分の気持ちを確かめるように発した言葉に、チクリと胸が痛む。
無意識にぎゅっと握りしめた拳が震える。
「教えてください、立花さん……。｣
『……正しかったよ。』
「！」
突如聞こえた声に、思わず顔を向ける。
そこには、僕の尊敬する先輩によく似た、別の人物が立っていた。
『それで正しかったよ。神崎くん。正しさというものは、武器に過ぎないから。』
「……」
風が頬を撫でる。
僕はただ、紡ぎだされる彼女の柔らかな声を受け入れた。
『誰かを攻撃する時に、正しさは役に立つもの。守りたい時、助けたい時、それは意味をなさない。でもね、神崎くん。』
『それでも君は、最後までやりきったのよ。警察としての正義を捨てて、君は自分の正しさを貫き通した。誰にでもできることじゃない。』
『飯田リンタロウも、同じだよ。法という正義を捨てて、必死に自分の正しさを訴えた。命にかえても、彼は彼の正しさを知ってほしかったの。』
『あれで良かったのよ、神崎くん。君はちゃんと正しかったよ。』
『……なんてね。立花さんのお言葉でした、と。』
最後にそう言って柔らかく微笑んだ彼女の表情は、確かに立花さんを想像させるものだった。
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Lito(プロフ) - 神作品に出会ってしまった…更新待ってます！続きをお恵みください……！！！ (2022年1月31日 17時) (
レス) @page8 id: d0534e1594 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - 神無雪。/くろめも@元uruhuさんさん» コメントありがとうございます。わかります〜;;そんな風に言っていただけて嬉しいです！頑張って完成させたいと思いますので、これからよろしくお願いします……！ (2020年11月13日 12時) (レス) id: d4ba406946 (このIDを非表示/違反報告)
神無雪。/くろめも@元uruhuさん(プロフ) - 神崎ソウシロウさんの作品ちょっと少ないので読んでて楽しいです (2020年11月13日 6時) (レス) id: 18e59d97df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぴら | 作成日時：2020年11月13日 4時
