8話 ツンドラスター〜支え・前編〜 ページ12
休養日の翌日、Aは久しぶりに自主練を始めた。以前参加した襲名メンバーとのレッスンのセットリストを数時間練習した後、シャワーを浴びて部屋に行こうとすると大きな段ボール箱を抱えたゆきりんとまゆゆが前方から歩いてくる。
ゆ「A。ちょうどよかった。研究生にファンレターが来てますよ。あなたの分もあるからリビングに取りに行ってね」
A「はい。…相変わらず襲名メンバーの皆さんはすごいですね。そのファンレターの量…」
段ボール箱にはファンレターがぎっしり詰まっていた。重いだろうにまゆゆはまったく平気そうでいつも通り無表情な顔をしている。
ま「これは一部。まだ玄関に置いてある」
A(…ほんとすごい。やっぱ襲名メンバーの人気ってハンパじゃない)
Aは自分宛のファンレターを取りに行こうと思ったが、ある事を思い出しそろそろとゆきりんに言った。
A「あの、ゆきりんさん。お願いがあるんですが…」
ゆ「あら。Aが何かをお願いするなんて珍しいですね。何かしら?」
A「その、握手会について色々教えてもらえないでしょうか?ファンとの会話の仕方とか、色々技を教えてもらえないかと思いまして……忙しいのはわかってるんですけど、握手会の女王と呼ばれるゆきりんさんにぜひ教えてほしくて……」
Aがかなり申し訳なさそうに言うのをゆきりんとまゆゆはじっと見た後、ゆきりんはにっこりと微笑む。まるで菩薩のような慈愛に満ちた笑みだった。この笑みにファンは心をわしづかみにされ、夢中になっているのだ。
ゆ「全然構いませんよ。じゃあ、今日の夕ご飯の後に握手会の勉強会といきましょうか」
A「ありがとうございます!」
一礼してリビングに向かって歩いていくAの背をゆきりんは微笑ましく見つめていた。
ま「自主練増やしたり、見た目を変えたり色々して変わってきてたけど…」
ゆ「握手にも力を入れ始めたのね」
―――
リビングに足を踏み入れると、同期達がそれぞれ自分のファンレターを取りに来ていた。Aが来たのに一番に気づいた宇美がAに声をかける。
宇「これAの分のファンレターよ」
A「ありがとう(…あれ?)」
自分宛てのファンレターを宇美から受け取った時、Aは違和感に気づいた。
晶「Aやったじゃん。ファンレターの数増えてるよね」
A「…だよね」
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作者名:空 | 作者ホームページ:http://id38.fm-p.jp/213/7772010/
作成日時:2017年7月15日 8時