34話 ページ35
智「じゃあそろそろお部屋に行こうか。向こうで和先生が待ってるから」
貴「はい」
智「車椅子で移動するけど気分が悪くなったらすぐに言ってね」
貴「わかりました」
智「よし、膝にはこれかけててね」
茶色のブランケットをかけてもらうと智先生が背中側にまわり車椅子を押し始める。
智「Aちゃんもう高校生になったんだねぇ」
貴「はい」
智「入学式どうだった？千尋と愛ちゃんは一緒の学校なんでしょ？」
貴「千尋と愛とはクラスも一緒でした。入学式は…少し疲れました、あはは」
入学式程度で疲れる自分が情けなくて苦笑いをしてしまった。
智「そっか、疲れちゃったか。和先生心配してたよ」
貴「え？和先生が？」
智「うん、Aは自分の体を大切にしないからーって」
貴「そんなこと…」
智「ふふ、ないっては言えない？」
貴「いいんですよ、私なんか…」
全部を言い終わる前に智先生が私の目線に合わせて座るのが見え、思わず口ごもる。
智「その先、何を言おうとしたの？」
貴「…え、」
智「私なんかが？」
貴「っ、私なんか…居なくなっても…別にいいから、」
智「っ…」
私の傷を痛むように顔をしかめる先生。
智「…そんなこと言わないでっ」
貴「何で…先生がそんなこと、」
智「大事だから」
貴「大事な患者さんだから？死なれたら困るから？」
智「ちょっとAちゃん…」
あぁとうとう言ってしまった。
この先も言うつもりなんてなかったのに。
ほしい言葉を求めているくせにどこかでは聞きたくないからって逃げてしまう。
智「…ごめん、Aちゃん疲れてるもんね。今日はこの話やめようか」
貴「っ、すいません、」
智「Aちゃんが謝ることじゃないよ。でもこの話はちゃんとしたい。高校生活にも慣れて体調が落ち着いたら俺と話をしようか。嫌でも話そう」
貴「…っいい」
智「Aちゃん」
貴「話したってお母さんたちが帰ってくるわけじゃない」
智「でも僕は苦しんでるAちゃんを無視できない」
貴「苦しんでなんかないっ」
智「じゃあ何でいなくなってもいいなんて言うの？」
貴「…っ本当のことだから」
智「じゃあ晃くんが1人になってもいいって？」
貴「お兄ちゃんは私がいない方がいいに決まってる」
智「…もうっ、」
貴「本当は先生たちも迷惑なんでしょ、こんな弱い私なんて…」
お互いに泣きそうな顔をしながら言い合う。
もう1つの足音がしていることにも気づかずに。
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空蝉(プロフ) - naoさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきました。 (2020年2月3日 21時) (
レス) id: 94fcae9fee (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 登場人物のところの紹介の友人の所が桜井のって全部なってるけど、桜木の間違いですよね。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空蝉 | 作成日時：2020年1月27日 22時
