28話 翔side ページ29
晃「すいません、俺の分まで」
翔「こっちは付き合ってもらってるわけだから気にしないでよ」
車の通りが少なくなった道路を走りながら熱々のコーヒーを少しすする。
晃「っなんか懐かしい…」
そう小さく聞こえたのはきっと幻聴ではないのだろう。
翔「もしかして覚えてくれてるの？」
晃「え？あ、聞こえてました？」
翔「そりゃあ隣にいるからねぇ」
助手席に座る晃の顔をちらっとみる。
病院を出る前よりは明らかに顔色がよくなっていた。
翔「…晃、ごめんな」
晃「え、どうしたんですか？」
翔「智先生と話してたこと」
晃「あぁ…、あれは俺が悪いんですよ」
翔「そうじゃなくて。俺晃と智先生が話してるとき何の声もかけてやれなかった」
晃「そんなの…、いいんですって」
翔「智先生がいてくれたから晃は全部を吐き出せたわけだし。晃の苦しみを除いてやる方法もわかんないし、俺本当情けないよな…」
晃「っそんなこと言わないでくださいよ」
翔「…っ、」
晃「翔先生がいてくれたから俺は全部吐き出せたんです、俺知ってますからね、翔先生が俺のために考えていろいろしてくれてること」
翔「俺は何もしてないよ…」
晃「じゃあ何でその香水してるんですか？」
翔「えっ…、香水？」
晃「俺の声を聴いてくれるときはいつもその香水つけてるでしょ、俺が無理して笑ってるときはいつもコーヒーとサンドイッチを買ってくれて、疲れた顔してるときは必ず寝る前にメッセージをくれて、連絡しなかったら心配して電話もくれる、俺全部知ってます。先生が俺のためにしてくれたこと。Aを心配してくれるのと同じくらい俺のことも気にかけてくれてること」
翔「…な、っんで」
晃「いつも翔先生に助けられてるんです」
翔「そんなの…」
晃「あたりまえだって言ってくれるんですよね。わかってます、でも俺はその優しさに救われてたんです」
翔「…んっ、」
今まで聴くことのなかった晃の声
俺はちっぽけな力だと思っていたのに晃はそれを受け止めてくれていたんだ。
翔「ごめん、なんか取り乱して…」
晃「いえ、こんな先生初めて見ましたからラッキーですよ」
翔「っ、そんなこと言うなよー」
晃「あはは、あ、サンドイッチ食べますか？」
翔「んー、もう着くから車止めてから食べようかな」
晃「え、もう着くんですか？」
少し走ると明かりの切れた街灯の下へ車を止める。
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空蝉(プロフ) - naoさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきました。 (2020年2月3日 21時) (
レス) id: 94fcae9fee (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 登場人物のところの紹介の友人の所が桜井のって全部なってるけど、桜木の間違いですよね。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空蝉 | 作成日時：2020年1月27日 22時
