20話 智side ページ21
「ガラガラ」
手に2つの薬を持った翔が帰ってきた。
翔「どう、まだ眠ってる？」
智「んー、眠りが浅いのかも。さっき1度だけ起きた」
翔「そっか、できれば点滴したいんだけどなぁ」
智「いいよ、このまま抱えてるから」
翔「マジ？そうしてくれるとありがたい」
智「はいはい」
少しだけ彼女の体を浮かせると自分の膝の上に乗せ両腕で抑え込むように抱きしめる。
貴「…っ、ん、…ったぃ」
智「おっもしかして起きてた？」
貴「ん、…っ、て、」
智「ん？ごめんね、痛くても少しだけ我慢してね」
翔「そのまま智くんの方向いててねぇ」
貴「……」
翔「はい、おしまい。よく頑張ったね」
翔の大きな手が彼女の小さな頭を撫でる。
智「痛くない？大丈夫？」
貴「…て、」
智「…手？」
翔「あぁもしかして智くんの腕？」
貴「…んっ」
智「あぁ血が着いちゃってるからかぁ、心配してくれたんだね。んふふ」
僕のシャツに滲んでいる血は彼女の闘った証拠だ。
僕は何ともなかったけど痛そうに見えたんだろう。
智「ふふ。痛くないよ、大丈夫」
貴「…ん、いたいの」
しっかりした声で彼女が呟いた。
翔「あはは、血がついてるなんて怖いよね。痛いよねぇ」
智「えぇ？痛くないのにー」
翔「着替えておいでよ。俺がいるから」
智「んえ、じゃあAちゃんはどっちの膝に座りたい？」
貴「えっ…」
翔「誰も怒らないから大丈夫よ」
翔が優しくそういうと、彼女は戸惑ったようにでもはっきりと翔の方へ腕を伸ばした。
智「…まさか、うそだ…」
翔「んふふ、そうかぁ。じゃあこっちおいで」
丸まった小さな体は僕の腕をするりと抜け翔の腕の中へ吸い込まれる。
智「…フラれたな」
翔「んふ、ほら兄さん着替えておいでよ」
＊
…僕はあの日、人生で初めて次男に負けたんだ。
そんな昔ばなしを思い出しながらナースステーションへと着いた。
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空蝉(プロフ) - naoさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきました。 (2020年2月3日 21時) (
レス) id: 94fcae9fee (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 登場人物のところの紹介の友人の所が桜井のって全部なってるけど、桜木の間違いですよね。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空蝉 | 作成日時：2020年1月27日 22時
