17話 智side ページ18
翔「話が落ち着いたことだし、ちょっとAちゃんの診察していい？」
智「うん、フォローするよ」
翔「お願い」
翔の一声で俺は白衣を脱ぎ、お兄さんと彼女の前にカーテンを引いた。
白衣はカーテン裏のソファにかけると彼女の視界に入るように椅子をベッドの淵に寄せ腰を下ろす。
まずはあえて目を合わせずに優しい声で呼びかけてみよう。
智「Aちゃん、こんにちは」
呼びかけに反応はないものの、挨拶と一緒に軽く握った手にはかすかな力が感じられた。
きっと反応を示してくれているんだろう。
智「調子はどうかな、痛いところはある？」
問いかけると隣で翔も同じく耳を傾けているのがわかる。そして僕の手には挨拶の時よりも強い反応が返ってきた。
智「その痛いところ、隣にいる僕の弟に教えてほしいな」
わざと先生ではなくもっと柔い関係の名を口にする。
貴「っ、…ぉ、なか、」
彼女から絞りだされた声が届くと翔は一瞬で考えこむような仕草をみせた。
智「そっか、お腹いたい？…少し診てもいいかな？」
今まで順調に届いていた反応がピタリとやむ。あぁ何かが彼女を不安にさせているのかもしれない。
不安をできるだけ取り除けるようにいつもより柔い声で話しかける。
智「僕はAちゃんが嫌だと思うことはできるだけしたくない」
意味をくんだのだろうか、少しだけ彼女の手に力が入った。
智「必死に伝えてくれた痛みを先生として見逃すわけにはいかないんだ」
声につられるよう次第に震え始める小さな肩。彼女も心の中で闘っているんだろうな。
智「…診察させてほしい。でももし途中で嫌だったら僕の手を握って。その時はすぐにやめるから」
俺の横で見守っていた翔が頷き、少しの時間が流れると彼女も覚悟を決めたようにゆっくりと頷いた。
智「よし、じゃあまずは一緒に深呼吸しよう」
貴「…すぅー、はぁー」
智「すぅー、はぁー」
握る手に少しの隙間ができる。緊張が抜けてきたかな。
翔へ優しく囁く。
智「ゆっくり頼むよ」
翔「ん、」
翔は聴診器を温め始めた。
智「Aちゃんもう1回、深呼吸できる？」
僕の問いかけに反応を示すようになるのを確認すると、翔は彼女の服の裾に手をかけ少し開いた隙間から聴診器を滑り込ませる。
温めていても異物が触れることはさすがに誤魔化しきれない。
彼女の体がびくっと震え、僕の手を握る力が増す。
余程怖いのだろう、今までとは比べられないほどの力だ。
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空蝉(プロフ) - naoさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきました。 (2020年2月3日 21時) (
レス) id: 94fcae9fee (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 登場人物のところの紹介の友人の所が桜井のって全部なってるけど、桜木の間違いですよね。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空蝉 | 作成日時：2020年1月27日 22時
