第百伍拾漆訓 ページ31
金髪の女の子、髷を結った大柄な男、その後ろからサングラスをかけた万斉が現れた。
万斉「これはこれは、久しい客人でござる」
貴方「…悪いが覚えてない」
キッと誰よりも睨みを効かせて万斉を見た。その瞳に何かを読み取った万斉は薄く口元を緩めた。
万斉「ほぅ…幾分かリズムが変わったようでござるな」
サングラスを掛け直してそれ以上は何も言わなかった。何故だろう。彼はあの時にも感じた、強い敵対心を持ち合わせていない気がする。Aは彼に対して不思議な感覚を持っていた。
追っ手が来ない静かな場所で、船を待つ最中、高杉が怪我で動けないAに近づき不敵に口角を上げた。
高杉「しかし、幕府の犬と幕府の人間が見合いたァどういう性分で」
貴方「知るものか」
阿伏兎への反抗が止まらずようやく下ろしてもらったが、傷が深く痛むため立つ気力は無かった。冷たい地面に座るAは見下ろしてくる高杉を睨む。
高杉「上のモンに押し付けられたか?」
押し付けられてない。自分が勝手に決めたこと。けれど、自然と見上げる視線が逸らされ、高杉はそれに見透かしたかのように笑う。
貴方「…私の判断だ」
高杉「判断、ねぇ。それで大切な人を護れたらってか?」
貴方「……」
言葉が詰まる。コイツは、きっと分かっていて聞いている。なにもかも。答えないAに高杉の笑顔が消えた。低い、高杉の声が放たれる。
高杉「護れねぇよ。大切なもんなんて、いずれ必ず失うもんさ」
貴方「……」
憎しみと怒り。ただその負の感情だけが込められた声だった。なにがそんなに彼を苦しめている。なにが彼を変えてしまった。自分と同じ、重なるものを見た気がした。だから、なのだろうか。本当は寂しい。辛いと泣いている弱い面影が見える。
貴方「…そうだよ。いつかは失う」
だってそうでしょ。憎しみと怒り。失ってこの世界が憎いのは、それだけ人を愛していたってこと。優しい心、愛しい心。誰よりも、もっていたってこと。お前だって、きっと、
貴方「…だからこそ、今そばにいたいもののために、命を張って戦える」
高杉「………」
きっと、
高杉「ふんっ…くだらねぇ」
分かっているはず。そばにいるはず。失っても、失っていない。何も。変わらない。大切にしたいもの。大切なもの。
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尾っぽ(プロフ) - 美恵子さん» ありがとうございます!! (2022年7月28日 17時) (レス) id: 96e7b68837 (このIDを非表示/違反報告)
美恵子(プロフ) - すっごくおもしろいです!!! (2022年7月2日 11時) (レス) id: 12d04b5d59 (このIDを非表示/違反報告)
尾っぽ(プロフ) - たろ。さん» めちゃくちゃ嬉しいです…私も嬉し泣きしちゃう…更新頑張りますね! (2022年3月24日 12時) (レス) id: 469c01063a (このIDを非表示/違反報告)
尾っぽ(プロフ) - 紫姫さん» ありがとうございます!イラストに興味がありましたらTwitter垢作ろうか悩んでるのでたぶん今後そちらにあげていきます!笑 (2022年3月24日 12時) (レス) id: 469c01063a (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 泣いたり笑ったり忙しいな。めちゃくちゃ面白くて一気読みしました。更新楽しみにしてます (2022年3月11日 2時) (レス) @page44 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:尾っぽ | 作成日時:2017年8月21日 1時