第百伍拾弐訓 ページ26
見合い当日。
今までに身につけたこともないシワひとつない着物に艶やかな髪を丁寧に結い、見合い相手の幕府の屋敷に顔を出した。
「これはこれは…なんと美しいお方…」
幕府の使いに全て着飾され、ほんのりと化粧も施してある彼女の姿はまるで作り物のようなとても美しい女性で相手の殿方は目を見開いてAを見つめていた。
横では松平も連れで挨拶を交わして相手方と談笑し、しばらくして、彼の希望で二人で酒が飲みたいと言われ、使いのものも相手の偉いお方も松平も部屋を後にした。
「好きなものは」「休みの日は何してるの」そんなありきたりな話をしていた。
その中で真選組の仕事についてはあまり触れなかった。彼なりの優しさなのかもしれない。正直助かった。
薄汚れた過去から繋がるこの仕事には、高貴な幕府の人間に嫁ぐには世界が違いすぎる。
彼はただ、普通に1人の女性として自分を見ていてくれてるのだと汲み取れた。
1人の、女子として。そんなことを思って生きたことなんてなかったものだから。今、自分が本当に自分ではないみたいで。
それでも彼は普通に優しかった。こちらへの気遣いを交えながら、話を途切らすこともなく、丁寧に対応してくれて、話だってつまらなくなくて、男としては非の打ち所のないような人だった。
無くなったお猪口に彼が汲もうとお酒を手に取る。
貴方「!…いや、いい。私がお酌しよう」
「え!いいんですよ。僕がしたいだけですから。遠慮しないでゆっくりくつろいでください」
貴方「……」
ニコリと笑顔を向けられてお酌される。こういうのは女性である自分の仕事なのに。
彼の優しさに戸惑うばかりだ。
その時だった。背後の襖から微かな気配を感じた。
「クク、お取り込み中悪いねぇ」
声が聞こえたと同時に弾丸が飛んできて、間一髪で彼を連れて避ける。
わぉ、と呑気な声が増えた。
「へぇ。ただの姉ちゃんじゃなさそうだな」
貴方「何者だ」
「俺か?ただの攘夷志士さ」
貴方「攘夷志士…?」
彼を背後に守り、男をキッと睨む。先程飛んできた銃を打ったのはその横にいるもう1人の男。
攘夷志士。
そう言った、はだけた着物を着た包帯を巻いた男を見て後ろにいる彼は叫ぶように言った。
「あ、あいつは…鬼兵隊の高杉晋助…!」
貴方「高杉…」
高杉を見れば隣にいたサーモンピンクの男がニコリと笑って傘の銃口をこちらに向けた。
「殺しに来たんだよ。幕府のお偉いさん」
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尾っぽ(プロフ) - 美恵子さん» ありがとうございます!! (2022年7月28日 17時) (レス) id: 96e7b68837 (このIDを非表示/違反報告)
美恵子(プロフ) - すっごくおもしろいです!!! (2022年7月2日 11時) (レス) id: 12d04b5d59 (このIDを非表示/違反報告)
尾っぽ(プロフ) - たろ。さん» めちゃくちゃ嬉しいです…私も嬉し泣きしちゃう…更新頑張りますね! (2022年3月24日 12時) (レス) id: 469c01063a (このIDを非表示/違反報告)
尾っぽ(プロフ) - 紫姫さん» ありがとうございます!イラストに興味がありましたらTwitter垢作ろうか悩んでるのでたぶん今後そちらにあげていきます!笑 (2022年3月24日 12時) (レス) id: 469c01063a (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 泣いたり笑ったり忙しいな。めちゃくちゃ面白くて一気読みしました。更新楽しみにしてます (2022年3月11日 2時) (レス) @page44 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:尾っぽ | 作成日時:2017年8月21日 1時