貴方「松平ァァ!!」沖「近藤さん、あれ誰ですかィ？」近「あの人は真選組の総長だよ」 皆「えぇぇぇええ！？」第肆部

第百二十九訓 ページ2

松林束吉が死んだ後、真選組が松平片栗虎を連れて松林家の屋敷を全壊。




屋敷の外。律也は幕府の松林家主君を殺害したとして責任を全て負い警察に自首した。





貴方「…律也…っ…」




新八と神楽に担がれながら律也を見つめる。けれど呼び止めることは出来なかった。

彼が決めた覚悟だから。




…でも、また、…失ってしまうのか、私は。


足元から指先まで小刻みに震えが止まらなかった。記憶の中から蘇る一人ぼっちだった頃の恐怖と孤独。

手錠をされ連れていかれる背中で何かを感じ取った律也がゆっくりと振り返る。






律也「……A、」





真っ暗だった記憶の中のそのまた奥へ一直線に届く。まるで入口のなかった洞窟に差し込んだ光で。





律也「胸張って生きるんだよ」





その言葉は、Aの心にストンと染み込んだ。泥だらけになって泣いていたAの汚れをきれいにしてくれたよう。



たった一言が色のなかったAの記憶を呼び覚ましてくれた。涙を堪えて見送るのが精一杯だった。




記憶が晴れたように。けれどそれと共に私の心も弱くなってしまったようだ。



何も言わずに立ち止まるAを見て律也は安心したようにまた歩き出した。







今度はもう、振り返らないよ。






律也の頬を濡らした涙に、Aは気付くことはなかった。

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