見せない涙 (ページ18)

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箒に跨って、空を飛ぶ人達を知っている。良く、子供向けの中で登場する魔法使いだ。まさか、異世界で魔法使いに出逢うとは。

「……！気を付けろ！『花かけらの波』だ！」

　カインの大声と共に、何処からか現れた沢山の美しい花かけらの波が夜空一面に広がって居た。

「夜空一面に、高波みたいな花びらの群れが……。これが、世界を修復する時に現れる『花かけらの波』！？これ、避けた方が良いの……！？」
「突っ込もう！だって、触ってみたいよね。賢者様！」
「……」
「待て待て！」
「こら、ムル。
「大丈夫！ほら、手を伸ばして！」
「……」

　すぐ側まで押し寄せる七色に輝く花びらの波。私は、そっと花びらの波へ手を伸ばす。ふわりと指先に触れた瞬間。輝きながらも、花びらの欠片は儚く砕け散る。私は、もう一度。花びらの欠片へ手を伸ばす。

「……」

　こんなにも儚くて美しい物が存在したのか。花かけらの波を見詰めている蓮の側に。一つの花びらの欠片が降り注ぎ、彼女の頬を撫で砕け散る。夜空に浮かぶ美しい濡れ羽色の髪へ、降り注ぐ花びらの欠片の魔法の粉は、彼女の美しさをより一層、美しくさせた。

「……綺麗……」

　ヒースクリフの向けられた言葉は、一体何方へ向けられた言葉か。

「皆さん、無事ですか？」
「ああ。凄い光景だな……」
「あはは！触れて良かっただろ！人生は旅さ！二度と出会えない素敵な物に溢れてる」

　銀河に抱かれて踊る様に、無数の光を纏って、彼等は笑い声を響かせた。そして、私達は花かけらの波を背に目的地場所へ飛去って行った。