色をなくした世界 (ページ42)

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「だーいじょうぶだって。綾子は、ともかく。俺がやったんだから」
「なんですって！？」
「ほんとうのことだろうが」
「人の手柄を横取りする気！？」
「そっちこそ」

松崎は、滝川の言い方が気に食わなかったのかムッと顔をしかめて、大声をあげて怒鳴った。そこから、始まる激しい口論。全く、先ほどまで仲よくナルを責めてた癖して、ほんと、呆れてしまう。私は、うんざりしたようすでそっぽを向く。

「？」

いつもは、困り顔で松崎たちの喧嘩を見ているはずのジョンが二人を無視して、天井を見上げている。私は首を傾げて、ジョンに釣られて天井を見上げる。しかし、なんの異常も見られない。なにが、そんなに気になるのか。ジョンに尋ねようとしたとき。パタパタと天井を誰かが走る音が聞こえてくる。

「……」
「……誰か、いるのかしら」
「まさか！全員、ここに……」

激しく言い合ってた二人もピタリと口論をやめて、眉を顰めて上を見上げた。全員が固唾を飲み込むなか、足音はピタリと階段前で止まる。

「ちょっと！」

足音が止まったと同時で、滝川が綾子の制止を張り切って、階段上へ駆け上がって行った。

「……気のせい……みたいだ。」
「……」
「……風の音よ」
『……風の音ね……』
「なによ、なにか言いたいことでもあるわけ？」
『いえ？別に、なんでもないですよ。ただ、いい大人が恥ずかしいなって』
「どういう意味よ！」

私は、呆れたようすで松崎たちを身揃えた。除霊とか、そんなのどうだっていい。自分たちでも失敗したと感じっているくせして、それを直向きで隠す。その姿が気に入らない。ナルを酷く責めた癖して、自分たちのことは棚に上げてあるその在り方が。

『言葉どおりの意味ですが？あなた方は、さきほどナルを酷く責めていましたよね？そのとき、ナルがなにか言い訳を一つでも溢しましたか？ほんと、大人のくせして……』

『みっともない』言いかけた瞬間。頭上から激しく、誰かがノックする音が聞こえてきた。

「ノック音……」
「また！？」

耳を塞ぎたくなるほどの騒音。床が激しく揺れ動き、天井の蛍光灯がパン！っと激しい音を立てて割れる。

「足音が、さっきより増えてはります」
「屋内運動界かよ。おい、外に出ろ！天井に注意しろよ！」

みんなが慌てて玄関口へ抜けていく。私も急いで旧校舎を出ようとした。その束の間。ガタンと音を立てて、靴箱がこちらへ倒れ込んでくる。

「！」
「嬢ちゃん！！」