色をなくした世界 (ページ41)

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私は、二人を無視して、機材の片付けをする。

「あら、ばーさんの除霊を見物しないの？」
『あなたたちの除霊なんかに、興味はありませんから』

子供を責めるような大人とは口なんて聞きたくない。何か言ってくる二人を無視して、黙々と機材を片付ける。

「よろしいのんですか。かたづけてしもうて」
『必要なら、また運べばいいから。それより、ここ。いつ、壊れるかわからないから……』

少し困りげな表情を浮かべながらも優しい笑顔を浮かべるジョンに、表情を和らげて私はそう告げた。

「ボウヤの説。まだ、信じてるわけ？」
『違うって、証拠があるんですか？だったら、悪霊がいる証拠を出してみたらいかがですか？仮にも霊能者なんでしょう？』

無表情に、冷めた視線で松崎を見つめる。ナルよりも冷淡な、心底軽蔑したような視線を向けられた松崎は、何も言えなくなりグッと口が盛る。都合が悪くなれば、黙り込む。大した大人ですこと。私は、そんな松崎を無視して実験室から出た。

「……オン。スンバ、ニスンバ、ウンバザラ、ウンハッタ、ジャク、ウン、バンコク……」

本来なら除霊効果はあるのだろう。しかし、ここには霊もいない。そのことを気づきもしないで、なにが霊能者だ。馬鹿馬鹿しい。冷めた視線で、お経を唱える滝川を素通りした。

ひと通り、機材を片付け終えた。

「蓮さん。二階のレコーダーセットしましたです」
『ありがとう。ごめんなさい、手伝わせて……』
「かましまへん。ほんならボクも、ちよこっと中を見てきますよって」
『気をつけて……』

軽く手を振って、見送ったあと。一息つくため階段へ座り込む。少し、疲れた。壁に頭を預けた目を閉じる。

「……谷山さん」

か細い声で名前を呼ばれて、瞼を開ければ帰ったはずの黒田が玄関口へ佇んでいた。

『黒田さん……』
「どう？」
『……黒田さんが帰ったあと、滝川さんたちがもう一回お祓いをしたんです。今は、見回りをしていますよ』
「渋谷さんさ？」
『さあ？どこに行ったんでしょうね？』
「……あら。子供の遊ぶ時間じゃないわよ。おうちに帰んなさい。除霊は成功したわよ」

そう言いながら二階から松崎が降りてくる。

「……まだ、除霊はできてないわ。感じるもの。まだ、霊がたくさんいる……」
「また、霊感ゴッコ？やめときなさいよ。こっちは、プロなんだから」
「そのわりには、たいしたことないじゃない」