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そんな、黒田の姿をみて。
「……意地のせいで、一種の癖になってしまったんだね」
「地盤沈下ではなく、彼女に何かあるのかもね」ぼそりと声を出して呟く。
「なんだって?」
『何でもないですよ。ただ……』
ナルには、どうやら聞こえてみたいだ。別に黒田を庇うわけではない。しかし、どの学校にも怪談というものは存在する。そこに、ロマンを感じる学生だって一定数いる。
『学校の片すみに、いかにもなにかありそうな古い校舎があって、幽霊がでるウワサがあって……それって、一瞬のロマンだとは思いませんか? ホントに、人が死んだりとかしたら嫌ですけど、無害な怪談ならあったほうが良いと思う方も居ると思うんですよね』
「……そんなものかな」
『学生なんってそういうものですよ』
きっと黒田もそうなんだろうな。ここまで、意地になっているのも。後に引けないから。彼女のようなタイプは苦手だけど、彼女も一人の若い学生なのだ。そんなことを考えていたとき。ピシッと鋭い音が聞こえてきた。ハッとして、私は窓辺の方へ視線を向ければ、ガラスに無数のヒビが入っていた。いつ、倒壊してもおかしくない。ナルの言うとおりだ。この建物は、もう限界へ達している。
「蓮、外へ……」
「きゃあああ!」
黒田の悲鳴と同時で、窓ガラスが割れ落ちる。
『黒田さん……』
しゃがみ込んでしまった、黒田のそばへ駆け寄る。その瞬間、人がドアを叩くような音が鳴り響く。
「……倒壊する……?」
ナルは呆然としたまま立ち尽くす。バンという凄まじい音ともに、引き戸が開いたり開いたりと繰り返す。まるで、霊の仕業だと思わせるように。その光景に、呆然としていた筈のナルは、ハッとする。そして、黒田のそばにいる蓮の腕を掴んだ。
『ナル?』
「外へ出ろ! この建物は、脆いんだ!」
窓ガラスを割って、私たちは窓から外へと出た。
窓から急いで飛び出して、私たちは呆然とした様子で外から旧校舎を眺めていた。
「……なんだよ。ありゃあ……」
『黒田さん、大丈夫?』
私は、黒田の方へ振り返る。黒田は、顔を伏せている。
「血が出てるわ。手だして」
先ほどの窓ガラスの破片で手を切ったのだろう。黒田の手からは、血が滴り落ちていた。
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クジラ大好きマン(プロフ) - 柏餅さん» お返事が遅くなりすみません! コメントありがとうございます! (2月18日 23時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅 - 神すぎます! (12月29日 20時) (レス) id: c21f6abdfc (このIDを非表示/違反報告)
クジラ大好きマン(プロフ) - hiyoriさん» コメント有難う御座います! (9月8日 20時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori(プロフ) - 更新ありがとうございます!楽しみにしてます (9月8日 18時) (レス) @page13 id: 45d5329a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年9月3日 4時