色をなくした世界 (ページ27)

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＊ページ27

熱くなにかを語っている恵子たちを一歩引いた目でみる。

『……』
「！」

半ば、感心した様子で恵子たちを眺めていると黒田さんと視線がかち合った。黒田さんは、何か言いた気な表情でこちらを見ていたが、私と視線が合うなり逃げる様にして教室を出て行ってしまった。

＊

午前中だけだった授業を終えて、私はナルに言われたとおり。旧校舎へやって来ていた。機材の置かれているベースへ足を運び、ベースへ入ると。

「！」

まだ誰もいない筈のベースに、ただ一人。黒田さんだけが佇んでいた。

『……何してるの？』
「別に……見に来ただけよ。渋谷さんは、いないのね」

黒田は、気まずげな様子で視線を逸らす。私は、黒田に対して、別に興味もないため黒田のそばを通り過ぎて、持っていた鞄を机の上に置く。そして、ナルたちが来るまで暇つぶしにと。鞄から文庫本を取り出して、椅子へ腰をかけて本を読み始める。

「……ね。昨日、どうだった？」
『どうって。別に……。特に、変わりはなかったよ。ナルも異常なしだって、言ってたし。あと、その機材に触らない方がいいよ。あの人が怒るから』

淡々とした口調で、黒田へ返す。人からみたら、無愛想で嫌な奴だと思われるかもしれない。けれども私は、どうしても今の黒田を好きにはなれない。だから、そこは許してほしい。

「他には？」
『……巫女の人が教室に閉じ込められる事件があったけど、心霊現象かどうかは、意見が別れてる」
「なぜ？」

嫌に食い込んでくる。ほんとに、非常にめんどくささを感じる。

『……霊媒の人が、ここに霊は居ないって証言しててね』
「霊媒って。原真砂子でしょ？あいつ、ニセモノよ。ちょっと、キレイなんでＴＶでチヤホヤされてるだけでしょ。霊能力なんてないわ」

本物の霊媒師をニセモノ扱いするか。原を庇うわけではないが、原の実力はきっと確かだ。人の実力を貶してまで、自身の妄想を信じさせたいか。ほんと、彼女のこう言うところが好きになれない。反吐が出るよ。私は、冷めた視線で黒田は見つめる。しかし、黒田は気づいていない様子でペラペラと独り言の様に話す。

「……霊はいるわよ。……強い霊が……」
『……それ、あなたが感じているだけでしょ』
「私、さっき襲われたの。本当よ。廊下を歩いていたら、急に誰かがすごい力で髪を引っ張ったの。逃げようとしたら首を絞められて」

霊に首を絞められたと言う割には、黒田の首には跡が一つも残っていない。