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「まあ、あの校長も大袈裟よねえ。こーんな、ボロっちい旧校舎ひとつに何人も」
「そう。俺だけでよかったんだ」
「あーら。それは、どうかしら」
いがみ合う二人を、すこし離れた場所で冷たい視線を向けていた。何も居ない場所をどうお祓いするのか。そんな、私をよそに、松崎は小馬鹿にした笑顔を浮かべてナルへ声をかける。
「ところで、ボウヤ。名前は?」
「渋谷一也といいますが」
「聞いたことねえな。三流だろう」
「アタシ。滝川法生なんてのも聞いたことないわよ」
「そりゃ。勉強がたりないねえ。じつは、俺も松崎ナントカなんて聞いたことないんだわ」
「あんたのほうこそ、勉強不足じゃあないの?」
霊能者と呼ばれる二人のあまりにも不毛な喧嘩に、冷たさを通り越して、呆れを覚えてしまう。この二人と関わるだけで、すこしだけ疲れる。
「谷山さん」
ふっと聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、振り返れば見覚えのある顔立ち。今日もうざく絡んできたクラスメイトの黒田さんだ。面倒なのが、また増えたと私は心の中でため息をひとつ吐く。
「この人たちは?」
『旧校舎を調べに来た人たち……。巫女さんと坊さんらしい』
「ああ! よかったわ。旧校舎は悪い霊の巣で、私、困ってたんです!」
突然あらわれた黒田さんへ対して、今まで言い合いをしていた2人がピタリとお互い口を噤む。そして、気の強そうな巫女である松崎が、冷めた目線で黒田をジロリと見つめた。
「……あんたが。どうしたって?」
「私、霊感が強くて。それで、すごく悩まされ……」
「自己顕示欲」
「……え?」
「目立ちたがりね。あんだ。そんなに、自分に注目してほしい?」
「……」
初めて松崎と意見が一致したような気がした。側からみれば、松崎の言葉は冷たく感じる。けれども、私は黒田が可哀想とは思わなかった。松崎の言うとおり。彼女は見えないものを見えると嘘を吐いている。
「あなた、霊感なんてこれっぽっちもないでしょう。見ていれば分かるわ」
見透かしたような冷めた目線を降り注ぐ松崎へ黒田は歪な笑みを浮かべた。
「……なによ」
「……私は、霊感が強いの。霊を呼んで、あなたに憑けてあげるわ……。強いんだからね……。本当に」
まるで自身へ言いつけるように呟く彼女へ対して、妙な違和感を感じる。
「ニセ巫女……。今に後悔するわ……」
松崎を睨み上げたあと、黒田さんは捨て台詞を吐いて旧校舎から去っていった。
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クジラ大好きマン(プロフ) - 柏餅さん» お返事が遅くなりすみません! コメントありがとうございます! (2月18日 23時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅 - 神すぎます! (12月29日 20時) (レス) id: c21f6abdfc (このIDを非表示/違反報告)
クジラ大好きマン(プロフ) - hiyoriさん» コメント有難う御座います! (9月8日 20時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori(プロフ) - 更新ありがとうございます!楽しみにしてます (9月8日 18時) (レス) @page13 id: 45d5329a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年9月3日 4時