色をなくした世界 (ページ12)

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図星を疲れたのか黒田は顔を真っ赤にさせて怒鳴る。けれども、怒る黒田とは対照的で渋谷は感情に飲まれる事なく酷く冷静だった。

「校長先生が旧校舎が取り壊さなくて困るとボヤいてたな。君が除霊してあげれば良いと思うが？」

正論中の正論。霊が見えて祓える能力があるのであれば、霊を祓う事なんてどうってこと無いはず。

「あのう……」

言い合いをする2人を蚊帳の外で眺めて居た友人達の内の1人がおずおずと渋谷へ声を掛けた。

「渋谷先輩。今日はやめときませんか」
「あ、あたしも。なんか気が乗らないや」
「……そう。じゃあ、またいつか」

渋谷は優しく友人達へ微笑んだ後、黒田越しから蓮の方へ視線を向けた。

「……なによ！」

黒田は自分が見られて居ると思ったのか目くじらを立てて、鋭い視線で渋谷を睨む。

「いや。……ああ。谷山さん、ちょっと」
『何か？』
「少し、時間をくれないか？」

微笑んで居ながら鋭い視線を向ける。その視線はまるで『お前に拒否権があると思うなよ』語って居る様で、蓮は気付かれない様、一つ溜息を吐く。そして、自身だけが渋谷からお呼ばれした事へ不満を述べる友人達を宥めた後、さっそうと教室から出て行った渋谷の後を追った。

渋谷を追いかけて登下校という事もあって生徒を誰1人とも見掛けない薄暗い廊下を渋谷と2人で歩く。お互いが口を開く事なく黙々と歩いていく中で先に沈黙を破ったのは、意外にも渋谷の方からだった。

「……彼女はクラスメイトか？」
『まあ……』
「……本当に霊能者かな」
『本人が言うのであれば、そうなんでしょうね。それよりも今朝の方はお怪我の方は大丈夫でしたか？』
「それなんだが。右足を捻挫した。かなり酷い状態でしばらく立てそうにない」
『それは、申し訳ない事をしました。治療費をお払い致しますので……』
「治療費は良い。それよりも、君が怪我をさせてしまった助手が動かなくて困って居る。おまけにカメラも壊れた」

不可抗力と言えど怪我をさせてしまったのは此方の落ち度でカメラも壊してしまったとなれば、弁償するしか無い。

『カメラの方、弁償します。お幾らですか？』
「君に到底払えるとは思えないが……まあ良い。日本円で言うと約、○○○○万」
『……』

払えない額では無いが今の私の学生(立場上)は、払えない額だ。さて、どうしたものか。どう、償えば良いか。口元に手を当てて考え耽る。

「助手の代理をしてくれないか」
「……」
「嫌か？」
『いえ、それで償えるのであれば助手をさせて頂きます』