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「確かに、虎の被害は2週間前からこっちに集中している。それに、4日前に鶴見川で虎の目撃証言もある」

敦が孤児院を追い出さのが2週間前。虎の被害が出始めたのも同じ頃。鶴見川で目撃されたのも4日前。確かに、虎は敦を追いかけている様にも思われる。けれども……余りにも敦の話は不自然過ぎた。きっと、この事実は太宰も気づいている。さて、太宰はどう動くか。

「敦君。これから暇?」
「……猛烈に嫌な予感がするのですが」
「君が『人食い虎』に狙われてるなら好都合だよね。虎探しを手伝ってくれないかな」
「い、いい嫌ですよ! それって、つまり「餌」じゃないですか! 誰がそんな」
「でも。敦、報酬出るよ?」

蓮のメモ用紙に書かれた報酬と書かれた文字に、敦の目が眩む。報酬が出れば、何日は空腹を凌げる。

「国木田君は社に戻って、この紙を社長に」
「おい。三人で捕まえる気か? まずは情報の裏を取って……」
「良いから」
「ち、ちなみに。報酬はいかほど?」
「これくらい」

紙に書かれた金額を見て敦は驚愕した。

  *

折り畳まれた紙を太宰から渡された国木田とは、そのまま茶屋で別れて、私達3人は倉庫へやって来て居た。すっかりと辺りは日が暮れて倉庫の隙間からは月がひっそりと雲の影から現れて居た。ぼんやり月を眺めながら、蓮は太宰へ持たれた掛かったまま、うとうとして居た。

「蓮ちゃん。眠たいなら寝てて良いよ」

優しい声音で太宰は私の頭を優しく撫でた。『うん……』太宰の手付きに誘導されるかの様に、私は太宰へ持たれた掛かったまま、深い微睡の中へ落ちて行った。その間、太宰はずっと私の頭を撫でてくれた。

「……本当に、ここに現れるんですか?」
「本当だよ。心配は要らない。虎が現れても、私の敵じゃないよ。こう見えても『武装探偵社』の一隅だ」

不安を漏らす敦を太宰は読んで居た本から顔を上げて敦の方へ視線を向ける。その間も蓮の頭を撫でる手を止める事はしなかった。

「はは。凄いですね。自信のある人は。僕なんか孤児院でも、ずっと『駄目な奴』って言われてて……そのうえ。今日の寝床も明日の食い扶持も知らない身で」

『天下の何処にもお前の居場所はありはせん……この世から消え失せるが良い』頭の中で反響する孤児院で何度も吐かれた言葉(くさび)。忘れようと努力しても忘れられない。敦の心の奥底の根深く絡み作く言葉の鎖は今も敦を苦しめる。

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クジラ大好きマン(プロフ) - くらげさん» コメント有難う御座います。拙い文章力ではありますが、褒めて下さり有難う御座います。 (7月29日 20時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 文章が非常にきれいで非常に読むのが楽しかったです。更新楽しみにさせていただきます。暑い日が続いておりますが、どうか御自愛ください。 (7月29日 16時) (レス) @page7 id: fa8f980323 (このIDを非表示/違反報告)
クジラ大好きマン(プロフ) - 七星 麗華@???,??,??さん» イベント参加させて頂きありがとうございます。作品を褒めて頂き有難う御座います! (7月25日 19時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
七星 麗華@???,??,??(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!設定からもう神ですね…更新楽しみにしています!体調にはお気をつけてください! (7月25日 19時) (レス) @page3 id: 50853c9852 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年7月23日 23時

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