人生万事塞翁が虎 ページ5
キラキラ光る夕焼けの太陽に照らされた川辺の直ぐ側の草原に座り込んで、ぼんやり遠くの景色を見詰めていた。川のせせらぐ音へ耳を傾け、頬を撫でる心地の良い微風を肌身で感じながら、蓮はそっと瞼を閉じる。『このまま、此処で寝てしまおう』膝を抱えて、自然の心地よさに身を任せて意識が微睡の中へ落ちて行く最中。私の背中に、とある衝撃が走った。衝撃で身構える事も出来ず、座り込んでいた体制が崩れて、草原を見知らぬ誰かと共に川岸へと転ぶ。
「て、抵抗は辞めて。お、大人しく金目の物を出せ!」
小さな小柄な蓮を押し倒して、緊張で身体を震わせて慣れない脅迫をする少年。私と変わらないぐらいの歳の男の子。蓮と彼の視線が静かに絡み合う。彼女の美しくも何処か神秘さを感じる瞳が真っ直ぐと自身を見詰める。
「すいません。此処数日、真面な食事をして居なくて……」
『大丈夫。気にしないで』
『矢張り、慣れない事をする物ではない』押し倒した蓮の身体から、少年はゆっくり離れた。顔を俯かせて、襲った事の後悔が滲んでいる少年を目の前で、蓮は表情を変える事なく、じっと少年の顔を見詰めて居た。
『貴方に食べ物を恵んで上げたい気持ちは山々なんだけど……家に、財布忘れちゃって。今は、私も君と同じ''無一文''なんだ』
スカートのポケットをひっくり返して財布が無い事を見せると、がっかりした様に少年はあからさまに肩を落とす。けれども、彼は意外にもタフであった。目の前の少女が無一文であるのならば、誰かから財布を奪い取り、金品を盗む。そして、腹拵えをするのだ。盗みを働く事へ対して、後悔や罪悪感を感じるが、空腹には敵わない。
「良し! 次に、此処を通り掛かった者。そいつを襲い、財布を奪い取る」
『気配……!』蓮とは違う、もう1人の気配。気配の感じた方へ、視線を向ければ、何処から共なく流れてくる人間の下半身。『これは、ノーカンで……』視線を逸らして、川岸の方へ視線を向けない様にする。しかし、少年は優しい心の持ち主だった。
「ええい!」
身なら構わず川へ飛び込んで行く。『助けるんだ』川で溺れている人を助ける少年をぼんやりとした表情で見詰めて居た。やがて、少年は川で溺れて居る人を助けると川岸へ運び、地面に手を付けて荒んだ呼吸を整えて居た。私は、そっと少年へ近寄り、少年の手で助けられた人の顔をまじまじ見詰める。少し癖毛の付いた髪と見覚えのある顔立ち。
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クジラ大好きマン(プロフ) - くらげさん» コメント有難う御座います。拙い文章力ではありますが、褒めて下さり有難う御座います。 (7月29日 20時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 文章が非常にきれいで非常に読むのが楽しかったです。更新楽しみにさせていただきます。暑い日が続いておりますが、どうか御自愛ください。 (7月29日 16時) (レス) @page7 id: fa8f980323 (このIDを非表示/違反報告)
クジラ大好きマン(プロフ) - 七星 麗華@???,??,??さん» イベント参加させて頂きありがとうございます。作品を褒めて頂き有難う御座います! (7月25日 19時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
七星 麗華@???,??,??(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!設定からもう神ですね…更新楽しみにしています!体調にはお気をつけてください! (7月25日 19時) (レス) @page3 id: 50853c9852 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年7月23日 23時