奇なる運命

＊ ページ12

異能が解けた敦は、虎の姿から元の姿へ戻る。虎へ姿を変えた事で体力を奪われたのか、敦は気絶し、そのまま太宰の方へ倒れ込む。

「……男と抱き合う趣味はない」

倒れ込む敦を避けた為、敦はそのまま地面へ倒れ込む。

「おい、太宰！」
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
「！ その小僧……。じゃあ、そいつが」
「うん。虎の能力者だ。変身してる間の記憶がなかったんだね」
「全く……次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。おかげで、非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ。それと……蓮に怪我は無いだろうな」
「大丈夫だよ。この通り、気持ちよく眠っている」
「それなら良い」

傷一つ無く、太宰の腕の中で眠っている蓮を見て国木田は安心した様に肩を落とす。その背後では、確く探偵社の面々が姿を現す。

「なンだ。怪我人はなしかい？ つまんないねェ」

与謝野晶子……。能力名『君死給勿(キミシニタマウコトナカレ)』。

「はっはっは。中々できるようになったじゃないか。太宰。まあ、僕には及ばないけどね！」

江戸川乱歩……。能力名『超推理(ちょうすいり)』。

「でも、そのヒト。どうするんです？ 自覚なかったわけでしょ？」

宮沢賢治……。能力名『雨ニモマケズ』。

「どうする。太宰？ 一応、区の災害指定猛獣だぞ」

国木田独歩……。能力名『独歩吟客(どっぽぎんかく)』。

「うふふ。実はもう決めてある」

太宰治……。能力名『人間失格(ニンゲンシッカク)』。

「うちの社員にする」

笑顔で、とんでもない事を口走った太宰に国木田は目を見開き驚愕する。

「はああああ！？」

これが、事の始まり……。怪奇ひしめく、この街で変人揃いの探偵社で、これより始まる怪奇譚。これが、先触れ前兆し……。

中島敦……。能力名『月下獣(げっかじゅう)』。

彼と彼へ関わった者の縁は、もう結ばれたから。

7／30 人生万事塞翁が虎 完

或る爆弾→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す