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名前も年齢も居住地にも何の間違いも無い。けれども、学歴と職業と年収は嘘偽りで塗り固められて居た。
「……貴方。フィーリングを嘘のスペックが凌駕してるじゃない」
蓮に咎められ、何よりも1番見られて欲しく無かった妹分に嘘で塗り固められたプロフィールを見られて、恥ずかしくなった柿花は唇を噛み締めた。
「分かってるよ！！ それでも……夢見たいんだよ。良いじゃねぇかよ。夢見るくらい……」
「顔の良い。お前に俺の苦労が分かるかよ」それだけ告げて、柿花は項垂れてしまった。
＊
覚束無い足取りで商店街を歩く柿花。前方からやってくる歩きスマホをして居る若者とぶつかり合う。「チッ」謝りもせず若者は一つ舌打ちをして去って行く。シャッターの掛かったお店に音を立ててぶつかり柿花は、自身の情け無さに自嘲気味に笑う。そんな時、メッセージが届いた事を知らせる通知音が鳴り響く。メッセージ欄を開ければ、好意を抱いて居る彼女からのメッセージが届いていた。
『お疲れ様です』
『仕事終わって、荒川に居るんですが、今から会えませんか？』
初めての彼女からのお誘い。
「え！？ え！？ え！？ どうする？ 行っちゃう！？」
柿花は、先程の憂鬱感が吹き飛ぶくらい焦せる。会いに行けば、愛しの彼女に会える。どうしようと年甲斐無く柿花は喜んだ。
一方、蓮はと言うと。気不味いまま柿花とやまびこで別れた後、直ぐに白川さんからより電話が掛かってきた。
「え？ 剛力が行方不明？」
「最近、全然連絡が取れなくて……病院もずっと閉めたままだし、患者さんに事情聞いても分からなくて……蓮ちゃん、先生とプライベートで中良かったよね。何か、聞いてない……？」
「……いや、私も何も」
何も聞いて無い事を告げれば「そう……」心配そうな声音がスマホ越しから聞こえて来た。剛力……何処に行ったの。ポツンと一筋の雨が蓮の手へと滑り落ちた。
降り注ぐ雨の中、傘を差さずに柿花は好意を抱く彼女と約束した場所へ走って居た。息を切らしながら辿り着いた古びたバス停。
「……しほちゃん？」
「……柿花さん、会いたかったです」
バス停の影から出て来た彼女……もといしほちゃん。写真で見るのと変わりの無い可愛らしい顔で笑うしほに柿花は頬を赤く染める。
「ごっ……ごめんね！ 待たせちゃって！ 夢中で、あのー……モニターに向かって作業してたからさ！ 慌ててタクシー乗ってたんだけど、この場所ちょっと分かりづらくて……」
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作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2023年6月11日 23時
