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「……もう、色んなもの超越して仏さんみたいな表情になってるじゃん」
「ちょっと待って、今整理してるから……」
それだけを伝えて押し黙った柿花を尻目で、蓮は最後の一口であるアイスを口の中へ頬張り込んだ。そこで、やっと頭の中を整理できた柿花が口を開く。
「悔しいけど、蓮。チャンスだよ、これ」
「なんの？」
「俺らは、このままいけば独身コースまっしぐらだぜ。女の子同士ではあるけど、あんな綺麗な嫁さんゲッドしたら大金星だよ」
「女の子同士では結婚出来ないよ。それに、結婚って別に勝ち負けじゃないでしょう」
「じゃあ、白川さんの事どう思ってんだよ。嫌いか？」
「別に、嫌いじゃないよ」
「好きなのか？」
「好きでもない」
嫌いでも好きでも無い。割とどうでも良い。其処まで仲良くしている訳でも無いし。唯の知り合い程度。それも友人が経営している病院で顔を合わせる程度。そんな関係の白川さんに対しては、なんの感情も湧き上がらない。
「お前、冷たい奴だな」
溜息を吐いて憐れみの視線を向ける柿花を無視して、身を沈めていたマッサージチェアから腰を上げる。
「けど、真面目な話。蓮の両親が帰ってきた時に、結婚している相手が入れば嘸かし喜ぶだろ。それに……お前の兄さん、小戸川だって」
「……。それより、両親が居なくなった俺に生活費を送ってくれた人に幸せな姿は見せてあげたいとは思うけどね」
すぐ側で座っている刺青の入ったマレーバクの方へ一度視線を向けるが、直ぐに視線を戻してマッサージチェアの場所から離れた。
柿花と別れていつも通りの仕事の業務をこなしていた時、一匹の動物が此方へ手を振っていた。乗車を求める客の側へ車を停車させて、ドアを開けて乗客を乗せる。
「すいません。2000円で新宿まで」
「此処から新宿だと3500円くらい掛かるよ」
「其処をなんとか！」
「じゃあ、昼メーターにして行けるとこまで行くよ」
「いや、新宿までお願いします」
運転席のヘッドレストを掴んで顔を近づけてくるスカンク。
「値切り方が強引で最早引く」
この様子では、私が頷くまで詰め寄るだろうと考えた末に面倒事は苦手と渋々2000円で新宿まで乗車する事を告げて車を発信させた。
＊
新宿までの道中。後部座席に座っていたスカンク事、今井は宝くじを両手で何やら唸り声を上げていた。
「くっそ！ 全部ハズレだ！」
持っていた数枚の宝くじの紙を巻き上げて拗ねる。
「宝くじ買うお金があるのなら、普通タクシー代くらい残さない？」
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作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2023年6月11日 23時
