＊ ページ16
「後悔してる事があるの？」
「……ないよ」
本当は嘘。私が、歩んで来た道は後悔ばかりだ。
「何もない」
長い生きばかりしてると後悔が生まれる。人も私も。あの時……兄を。けれども、この気持ちを白川さんに伝える必要も教える必要も無い。そう、誰にも。
「ご家族は？」
「気づいたら居なくなってた」
「いつ？」
「さあね。多分、
「そこから、どうやって生活してきたの？」
「……」
人の過去を根掘り葉掘り聞いて来る白川さんに「これ、圧迫面接か何か？」伝えれば、白川さんは困り気な表情を浮かべた。
「ごめんなさい。踏み込み過ぎたわね」
白川さんは、目線を下に下げて憂い気な表情を浮かべる。そんな、白川さんの表情をルームミラー越しから見た私は、白川さんへ向けて口を開く。
「……貴女はあるんだね。後悔していることが」
「……よく分かったね」
「伊達に長い生きはしてないからね」
「何それ」
悲し気な表情で儚気に笑うとか細い声で今迄の事を話し始めた。
「……看護学校行くのに奨学金を借りてしまった事かな」
「……」
「あの頃は、意地張って親に頼りたく無かったけど、頼ってれば良かったかなって」
「……お金、まだ返せて無いの？」
「ううん。返せた」
これ以上は踏み込んではイケナイと感じた私は、態とらしく敢えて話題を変えた。
「そう言えば。貴女って何処出身なの？」
「宮崎」
「ちょっと、宮崎民謡歌ってみて」
無理難題を吹っ掛けるも白川さんは難なく宮地民謡を歌い出す。
「歌えるんだ。それ、なんの歌？」
「男女の逢引きの歌。まあ、私はこんな人生を忍ぶ恋なんかじゃ無くて、真っ当で幸せな家庭を持って宮崎の両親を安心させたいんでさけどね……。28じゃ、そろそろ焦るのも無理ないでしょ？」
「貴女は……」
「その貴女って呼び方辞めて。私にはちゃんと白川美穂って名前があるんだから」
「……白川さんは好きな人は居るの？」
「いるよ」
「へぇ。どんな人？」
「どんな人？ うーん……言葉にするの難しいな」
顎に手を当てて悩む白川さん。
「写真とかあるの？」
「あるよ。見たい？」
「少しだけ見てみたい」
どんな人が写っているのかを柿花へ伝えてどんな反応するのかを見て見たい。そんな、性格の悪い事を考えて私は白川さんから差し出されたスマホを受け取る。そして、スマホの中を覗き込めば、液晶画面に映し出されて居たのは私の姿だった。
白川さんとの一連を全て話し終えて、静かな柿花の方へ視線を向ければ、柿花は目を大きく驚愕させて居た。
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作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2023年6月11日 23時
