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男は、向けられる殺気を目の前で足が竦んで動けない。けれども、早くこの男から逃げなければ、自信が殺されかねないと恐怖で竦む足を必死で動かし、叫び声を上げながら杉本から逃げ出す。

「酔っ払った勢いでしゃべりすぎて、急に怖くなってきたってことか?」

手に持っていた歩兵銃を強く握りしめ生唾を飲み込む。

「なんだよ……。さっきの与太話が急に真実味を帯びてきたじゃねえか。あいつ、まだ何か知ってるのか?」

あの男が言っていた金塊の話が、嘘では無く真実だとすれば、莫大な金が手に入る。そうすれば、あの子……梅ちゃんの治療費が稼げる。思いがけない舞い降りた幸運に、杉本は笑みを浮かべた。

  *

自身の前から男が去った後、杉元は先程、ちよっとした揉め事があったにも関わらず、未だ眠っている蓮へ苦笑いを浮かべる。

「蓮、起きて」
「っ……」

薄らと目を開ければ、瑠璃色の瞳の中に閉じ込められた夜空に広がる星屑の様な不思議な色合いをした美しき瞳と視線がかち合う。しかし、その瞳は何処かぼんやりとしていた。

「寝てたのに、起こしちゃってごめんね。でも……あの男を追わなきゃいけないんだ。自分の上着とマフラー出せるか?」

ぼんやりしながらも首を縦に頷き、小さなウエストバックから上着とマフラーを取り出した。杉元は、蓮から上着とマフラーを受け取ると、立ったまま眠りに就こうとしている蓮の首へマフラーを巻き、上着を着せる。そして、蓮の手を優しく引き、森の奥へと歩いて行く。暫く、深く降り積もった雪道を二人で歩いていた時、雪の中で埋まって居る一人の年老いた男を見つける。

「なんだこりゃ。何で、あんたが埋まってるんだ? 待ってろ、いま引っ張り出してやる」

雪を掻き分け掘り起こし、雪の中で埋まっている男の両腕を掴み、地面から引き抜く。ズルリと雪の中から出てきた男の腹はぽっかりと大きな空洞が出来、空いていた。

「はらわたが無くなっている」

男が埋められていた直ぐ側にはくっきり付いた熊の足跡。それを見て、杉元は「ヒグマが喰い残しを此処に埋めたんだ」結論付ける。「あんたも、ヒグマに会うなんてツイてないな」同情な目で埋められている男を見詰める杉本を尻目で、いつの間にか覚醒していた蓮は、男の上着の下から覗く奇妙な刺青があることに気が付く。

「杉元、見て……」

男の上着を剥ぎ、男の上着の下から現れた曲線と丸で囲まれた文字で出来た独特な刺青が現れる。

「オイ……。オイオイ。 どういう事なんだ? こりゃあ……」
「寝ている時に聞こえて来ていた囚人の一人ってこの人だったんだね」

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クジラ大好きマン(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメント、応援ありがとうございます。 (2023年1月4日 14時) (レス) id: 9880382174 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしています。 (2023年1月4日 12時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年1月3日 4時

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