ロンリーオンリーパラダイス ２〈完結〉

Just an ordinary day ページ26

体にわずかな重みを感じて目を開けると、すぐ目の前に藤ヶ谷くんの寝顔と規則的な息の音が聞こえる。

んんーーーーっ！

慣れない！

朝目が覚めて、すぐ横で藤ヶ谷くんが眠っているこの状況になかなか慣れない。

わずかな重みは藤ヶ谷くんの腕が私の肩のあたりにおおいかぶさっているからで。

動いたら起きそうだし、っていう名目で私はまじまじと藤ヶ谷くんの整った寝顔を見つめた。

まつげ長いなあ。

顎のラインと鎖骨がきれい。

芸術品みたい。

とか思ってたら、藤ヶ谷くんが目を薄く開いたから、慌てて目を閉じた。

「……今見てたよね」

ば、ばれてる。

「こーら。何で寝たふりすんの」

寝起きのいつもより低くてちょっと甘い声。

観念して目を開ける。

「鑑賞してたの。芸術的だなあって」

「鑑賞？」

「藤ヶ谷くんの寝顔。美術館に飾った方がいいと思う」

ふふって息で笑って、何だそれ、って言われた。

「Aさんの寝顔もかわいいよ？ちょっと口あいてて」

「え！バカにしてる！」

「してないよ」

「してる！」

くるん、て体勢を変えられて、あっという間に組み敷かれる。


「……誰にも見せたくないって思ってるよ」


前髪が目にかかってて、朝の気怠い藤ヶ谷くんの色気の破壊力がすごい。

ゆっくり唇が近づいてくる。

音もしないような、静かで優しいキスが、だんだん熱を帯びてくる。

「藤ヶ谷…く、ん、息…くるし」

藤ヶ谷くんの呼吸も段々荒くなる。


「はあ、このまま…しちゃおっか」


「む、無理！無理無理！明るい！却下！」

私が激しく首を振ると、えーってものすごく不満そう。

「むしろいいのに。明るい方が」

「ダメ！絶対！」

「違法なことしてる並にダメじゃん」

8歳の年齢差はいろいろと厳しいって察してほしい。


「それよりほら、今日せっかく休みだし。何する？」

私がそう言うと、やっと藤ヶ谷くんは手を離してくれた。

「そうだなー、寒いけど天気は良さそうだし。どっか行く？」


二人で毛布にくるまりながら、今日のプランを考える。

藤ヶ谷くんが思い出したように言う。


「角に新しくパン屋さんできてなかったっけ？」

「できてる！私も気になってた」

「じゃあパン買いに行こう」

「寒くなかったら河川敷で食べる？」

「いいね」


にっこり笑う顔を見て思う。

付き合うフリをしていたころと、今はやっぱり全然違う。

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