ロンリーオンリーパラダイス ２〈完結〉

63. ページ23

なんだか足元がふわふわしたまま、次の日出社する。

ちゃんと切り替えて仕事しないと。

「あっれー？Aさん…」

オフィスに着いた途端、二階堂くんにのぞきこまれる。

「何かいいことありました？」

「え？！特に何も……」

何、何、なんで？

頭の上にお花でも咲いてる？


咳払いして、仕事に取り掛かる。


なんとか午前中の仕事を終えて、お昼休み。

お弁当を食べようとしたら、藤ヶ谷くんが近づいてきた。


「Aさん、お昼一緒に食べよう」


オフィスが一瞬ざわってする。

「ちょちょ、ちょっと。藤ヶ谷くん」

私がひそひそ声で抗議しても、全然意に解さない藤ヶ谷くん。

「お弁当？外行く？」

「そ、そうだね。外行こう外…」

女子社員の視線が痛すぎる。

「なんで藤ヶ谷くんとAさん一緒にお昼食べるの？」

ひそひそ声が聞こえてきた。


「なんでって。俺の彼女、だから」


藤ヶ谷くんがしれっと言ったから、私はぎょっとして藤ヶ谷くんの腕を引っ張って慌てて外に出た。


「わ、わざわざ宣言しなくても」

「だって嫌だったんだよ。もう隠れてこそこそすんの」

「いやでも」

「ニカと桐谷さんにはもう言ったし」

「え？二階堂くんにも？」

朝のあれは！からかわれてたのか！


「もし何か言われたりされたりしたら。
今度はちゃんと守りたいんだよ」


「……真面目」

「え？」

「一人でいろいろ考えすぎないでよ」

「…はーい」

「誰かに何か言われたくらいでへこんでたら、藤ヶ谷くんと付き合えないから」


藤ヶ谷くんが、ははって白い歯を見せて笑う。


「頼もしいな」

おでこにキスが降ってくる。

そのまま、唇にも降りてくる。


「誰かに見られるよ…」

「誰も見てないって」

「でも」

「じゃあ今日も家行っていい？」


伏し目がちに、いつもより低い声でそんなこと言われたら。

駄目だなんて言えるわけない。

64.→←62.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す