ロンリーオンリーパラダイス ２〈完結〉

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たぶん桐谷さんも足怪我してると思ってないから行ってしまった。

ちょっと登ってくるまでに時間がかかってるんだろう、としか思ってないだろう。

「誰かいませんかー！」

声を出してみたけど、全然人の気配がしない。

「さ、寒」

真冬じゃないから凍えることはないけど、薄い浴衣に羽織り一枚で朝までいたらさすがにまずい気がした。

足の痛みも、ずきんずきんってさっきよりひどくなっている。

「あ、そうだ。スマホがあるんだ」

さっきまでキスミーの音楽聴いていて、羽織りのポケットに入れたはず。

と、思ったのにポケットにスマホはない。

さっき落ちた時に落としたのかも。


ありえないくらい不運が続く状況と、足の痛さにどんどん不安な気持ちが大きくなる。


「落ち着いて…たぶんスマホはどこか近くに落ちてる」

言い聞かせるみたいに呟きながら、手探りで足元を探す。


と、突然、数センチ先で聞き慣れた着信音が鳴って、画面が光っていた。

「みっくん」って画面に出ている。

「も、もしもし！」

「ごめん今社員旅行中だよな？
ほら、あのー、ちょっと気になって」

「みっくん……」

みっくんの声を聞いたら、ほっとして泣けてきた。

「んあ？どした？」

さすがに私の声が普通じゃないのに気づいたのか、みっくんが不思議そうな声になる。


「みっくん、助けて」


「え？！ちょ、Aちゃん？」


「今ね」


状況を説明しようとしたら、突然画面が暗くなった。


「嘘でしょ……」

たぶん電池が切れた。

ああ、来る時もさっきもキスミーの音楽ばっかり聴いていたから。


詰んだ。

本当にもう朝までここにいないとダメかも。


とりあえず足も痛いし下手に動かないようにしよう。




・




どれくらい時間が経ったのかわからない。

冷えてきた体をこすりながら、足の痛みに耐えていたら、だんだん意識が遠のいていく。

山で遭難した時寝たらしぬよ！とか言うけど、あれって本当なのかな。

しぬ前にもう一回ユウタのライブ見に行きたかったな。


とか考えていたら、急に目の前が明るくなった。

眩しくて目を細めたら、懐中電灯の明かりの向こうにみっくんが見えた。


「Aちゃん！」


すごい勢いでみっくんが降りて来て。


すごい勢いで抱きしめられて、いた。

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