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ガクくんは大袈裟な溜息をついて、またぐにゃりと大きく背中を曲げた。
「ちょっと…からかってるじゃないですか…」
『ちがう、からかってないよ、ほんとに』
「じゃあ酔ってるんですよ」
『それはそうかも』
「ほらやっぱり…」
『酔ってないと、ほんとの気持ちなんて言えないよ、こわいし』
「あぁ……え?ほんとの?」
『酔ってなかったら、こわくてこんなこと言えてない』
「え、え?」
へにゃりと丸まった背中を急に伸ばして、目をぱちぱちさせている。
『ガクくんが綺麗なのは、見た目だけじゃないよ。中身も』
「あー……えっと、」
落ち着きなく、綺麗な金髪をぐしゃぐしゃと撫で回している。そんな彼の様子がおもしろくて、またアルコールを含んだ。
「…本当に、からかってないんだったら」
『うん』
「たぶんその、僕も、Aさんと同じ気持ちです」
『同じ気持ち、って?』
「あー、うーん、なんだろう」
『うん』
時間がかかってもいい。彼の口から、彼自身の言葉で、彼の気持ちを聞きたい。
「Aさんも、綺麗です。それは見た目もそうなんですけど、その、内側も、っていうか」
『ふふ、うん』
「今日、Aさんを誘ったのも、僕がAさんといたら元気になれるからで、Aさんの顔を見たら、嫌なことなんて忘れられるんです」
『うん』
「えーっと、だから、Aさんとこうやって今みたいに、一緒にいられたら嬉しいし、Aさんともっと一緒にいたいって、ずっと、思ってます」
『うん』
忙しなく視線を動かしながら、照れくさそうに彼は話した。
「僕、そのくらい Aさんがいないとダメで。後輩なのにこんなこと言うのはすごく、烏滸がましいんですけど、もしよければ、僕とお付き合いしてください」
彼はまた大きく背中を丸めて、丁寧にお辞儀をした。
私はもう、その丸まった薄っぺらい身体を微笑ましく、愛おしく思えてしまうくらいには、ガクくんのことが好きだった。
『私も、ガクくんがいないとダメ』
ガクくんはゆっくりと顔を上げて、やわらかく笑った。
彼の笑顔と好意がいま私に向けられているという事実で胸がいっぱいで、にやけが止まらない。
彼の方を見てやさしく微笑みかけると、彼もまた、ふにゃりと笑顔を返してくれた。その笑顔を見るだけで私の心がどれだけ救われるのか、きっと彼はまだ知らない。
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ミルクティー / K.Yamamoto *→←心酔 / Gaku
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ぐり - 初めまして!雰囲気が好きですべて一気読みさせてもらいました🥹マユリカ阪本さんのお話読みたいです。時間がありましたらぜひお願いします(^^)v (5月11日 13時) (レス) id: 0e2050f731 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - いつもにやにやしながら読ませて頂いてます! リクエストなのですが、ヤーレンズの出井さんのお話お願いできませんでしょうか??哀さんのペースで大丈夫なのでよろしくお願い致します! (2023年4月22日 22時) (レス) id: 6bae7fb429 (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆん - 哀さん» こちらこそありがとうございました!素敵なお話でした✨ (2023年4月9日 11時) (レス) @page42 id: 4336aaf71d (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - まゆゆんさん» リクエストをいただいていた多田さんのお話を公開しました。コメントを読み違えてしまい、彼女設定ではありません。申し訳ございません🙇🏻♂️リクエストありがとうございました! (2023年4月9日 9時) (レス) id: 8ce96fbb9e (このIDを非表示/違反報告)
P-398(プロフ) - リクエストです!D.Shibaさんの恋人だった主人公が事故で亡くなってしまう話を(死ネタ不可でなければ)お願いします! (2023年3月17日 17時) (レス) id: 2cc94b219c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:哀 | 作成日時:2022年5月5日 10時