検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:26,318 hit

友だち ページ6

·


『うわ、ゆずるさん』

河「うわ、って何やねん。うわ、って」


つい二年前までマンゲキメンバーだったのに、この二年間でだいぶ遠い存在になってしまった気がする。
その証拠に、この楽屋にいる姿に違和感を覚え、思わず「うわ」などと口走ってしまった私がここにいる。


『なんか、すっかりシティボーイって感じっすね』

河「何やそれ。ボーイの歳でもないやろ」

『どうですか東京』

河「まぁこないして大阪にも来るし、そんなめちゃくちゃ変わったわけでもないけど、テレビの仕事は多なったな」

『やっぱねー、めちゃくちゃ見ますもん』

河「ほんま?」

『たまたまテレビつけて稲さんが映ったときの迫力すごいですよ』

河「ははは笑」


久しぶりに会った先輩と、大部屋のソファでお喋りの時間。

ちょっと向こうでは芸人が何人か集まってゲームをしていて、その近くのテーブルでは誰かがパソコンを触っていて。そんな、学校の休み時間がずっと続いているような空間が心地良い。


『最近のエピソードトークしてくださいよ』

河「えらい無茶ぶりやな笑 …あ、そういえば昨日東京で珍しくアキナに会うたわ」

『へー、26期感動の再会ですか。居合わせたかったなぁ』

河「37期感動の再会は無いん?」

『感動の再会も何も、すぐ会えますし笑 ほらそこに、』


私が指さした先に立っているのは、たくろうの赤木。


『赤木ー』

赤「え?あ、おう」


手を振ったら、戸惑いながらもちゃんと振り返してくれた。



『…あ、26期といえば』


私の頭に浮かんだのは、慌てて枝豆をつまんだ川西さんだった。
あの後 話を変えられてそのまま気にしていなかったけど、今考えてもあれは変だ。


『川西さんって、なんか最近変わったことありました?』

河「…え?」


ゆずるさんは、目を少し大きく開き、口も開いて、間の抜けた表情をした。
明らかに“何かを知っている”その人に、胸がザワつく。


『…え、何かあったんですか?』

河「あ、いや、別に」

『絶対何かあったやん』

河「いや…そんな大したことやないし」

『仕事のことですか?』

河「いや、」

『恋愛絡みですか?』


ゆずるさんの表情が、少し変わった。


河「…いや、」


少し遅れた否定。


『…恋愛絡みか』

河「いや、ちゃうで、ほんまに」


何を言っても、とりあえずは隠し通すつもりのようだ。

その確かな友情に心の中で敬意を示しながら、溜息をつく。

“憧れ”の色恋沙汰は、いつになっても苦手だ。


·

正直者→←ファン



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (56 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
167人がお気に入り
設定タグ:鯨人
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2022年1月26日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。