思考 ページ25
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『あー、川西さんが服買ってるん見たら私も服欲しくなってきました』
川「なんか見る?」
『そうですね…あ、今あんまりお金ないんやった、ちょっと無理ですね』
川「じゃあ俺が払うよ」
『いやいや、それは申し訳ないですって』
川「服選んでくれたお礼やって、な?」
『それは私が川西さんに好みを押し付けただけで…』
川「でもほら、めちゃくちゃ気に入ってるし」
そう言って、満面の笑みを作りながら両手を広げて服を見せてくれる。
『めちゃくちゃ作り笑顔やないっすか笑』
川「いやほんまに、めっちゃ良い買い物したと思ってるで」
『んー…まぁ、見るだけ見てもいいですか?』
川「ええよ、一緒に見よ」
“一緒に”というワードに思わず口元が綻びそうになったが、なんとか堪えた。
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川西さんも、一緒にキョロキョロしながら、たくさん並ぶ服屋さんの雰囲気を見てくれていた。
川「どんなんが欲しいん?」
『…特にないんですけど』
川「そうかぁ」
本当は、言いたいことは決まっている。
でも、それを言うことで変に誤解されてしまうのではないか、と思うと、なかなか言えなかった。
その、私の悩んでいる様子を感じ取ったのか、川西さんが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
川「どうしたん?何でも言いや」
『あー、はい、』
川「うん」
穏やかな笑みで、頷きながら私の言葉を待ってくれる川西さんの優しさに、また憧れの思いが増してしまった。
『…川西さん、って』
川「うん」
『どんな服が、好きですか』
やっと言えた、と思ったと同時に、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
川西さんも、予想外の言動に戸惑っているようだった。
川「…えー、と、それは…女の子の服、ってこと?」
『そう、すね』
川「あー…えぇ、何やろなぁ…特にこだわりとかないんやけど」
『そうですか』
川「…あ、そうや。色は割と落ち着いてる方が好みかな、白とか黒とか紺とかベージュとか」
『なるほど。ありがとうございます』
川「うん」
落ち着いた色合いの服装が好み。
それを聞いただけで、川西さんの好きなタイプを、大人で、シンプルな服も着こなせるかっこいい女性、だと勝手に判断してしまう。
これは“憧れ”が行き過ぎたが故の思考で、何の根拠もない。
なのに、この一種の勘とも言える結論を信じずにはいられない自分がいる。
そしてそれは、“川西さんよりも歳下”の私を落ち込ませるには十分すぎる結論だった。
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ぴの - お返事ありがとうございます!遅くなってしまって申し訳ないです😢えぇほんとですか嬉しいです(T-T)期待しています笑続編も嬉しかったです😢♡これからも更新楽しみにしています☺️頑張ってください! (2022年2月18日 23時) (レス) id: 07f35b63aa (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - ぴのさん» 温かいお言葉をありがとうございます( _ _ )!結末についてはお話できませんが、これからも変わらず読み続けていただけると嬉しいです🤍くるまさんメインの作品についても考えてみようとおもいます。今後ともよろしくお願いいたします! (2022年1月22日 2時) (レス) id: c39e85b81e (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - (続き)いつかくるまくんメインの作品も見てみたいです。これからも更新楽しみにしています。頑張ってください。 (2022年1月15日 0時) (レス) id: 07f35b63aa (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 初めまして。いつも楽しんで拝見しています。作中の芸人さんで特別応援してる方はいなかったのですが、主様が書かれるくるまくんが素敵すぎて令ロのことが好きになりました笑。名前の出順的にくるまくんは報われないのかななんて思い少し悲しいです(TT)笑 (2022年1月15日 0時) (レス) id: 07f35b63aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:哀 | 作成日時:2021年7月23日 16時