10.予想外 ページ10
「……綿貫桜哉」
改めて名前を教えてほしいと言われて、訊かれたので漢字まで教えてやれば、Aは『椿と同じ花の名前ね』桜は好きだと朗らかに笑った。
何なのだろうこの会話は――漠然とそう思いつつ、桜哉はまた興味深そうに窓の外を眺めはじめたAの横顔を眺める。
するとやはりというか、特殊メイクにしては出来すぎて見える彼女の額の角がどうにも気になって。
「……なあ、俺も１つ訊いていいか」
『なぁに？』
「そのツノ」
どうやって頭にくっ付いてんの？
あまり深く考えることなく、ただ珍しいものを試しに小突いてみる感覚で。
桜哉はAへ手を伸ばすと、その角に触った。
『ぴゃわっ!?』
「！」
途端、弾かれるように身を引いたAがズルッ！ と上がり込んでいた窓辺のスペースから落ちて、盛大に床へ尻もちを着く。
予想だにしていなかったオーバーリアクションに、桜哉が 「んなに驚かんでも……」と呆気にとられているうちに。
落っこちた体勢のまま固まって動かないAの、驚きに見開いた目のふちにジワリと涙が浮かびだした。
「は…!? なっ、おい…！ なに泣いて…っ、どっか怪我した!? ちょ、泣くなって…！」
『っ、ぁ… ちが、私……』
焦って傍に膝を着いた桜哉に、Aも困惑した様子で涙を拭いはじめる。
するとちょうどそのタイミングで、一番現れてほしくない面子がやって来てしまった。
「おはよう……A早起きだねぇ、昨日そこそこ遅かったの、に…？」
「Aが早起きっていうかつばきゅんが日頃から寝過ぎなんだよォ★ ……あ？」
「若…？ どうされました？」
部屋に入るなり立ち止まった椿とべルキアに、後に続いていたシャムロックも首を傾げる。
「あ〜ッ！ 桜哉がA泣かしてるゥ〜!?」
(最悪だ……)
状況を把握したらしいべルキアの声に桜哉が思わず口元を引き攣らせると、コンッと下駄を鳴らして椿は一足飛びにAの傍へ寄った。
「どうしたのA……桜哉、何があったのか説明してよ」
慰めるようにAの白髪を撫でつつ冷静に訊ねる椿に、桜哉は気まずい思いで言葉を詰まらせながら、それに答える。
「っ……ツノ… に、触ったら……驚いてそっから落ちて… 泣きました……」
「角に触った…？ …――あはっ！」
あはははは！ あははっははははははは！ あはははははは！
室内にまたいつもの高笑いが響き渡った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SERVAMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きー | 作成日時：2017年5月8日 3時
