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翌日の昼休み。
俺は使われていない教室の前に立っていた。手には部活紹介のポスターに紛れ込んでいた学校非公式部活「怪異部」のポスターが握られている。
左の目玉が溶けかけた手描きの幽霊がプリントされているポスターだ。
ゆっくりと息を吸い込んで、俺はドアを四回ノックする。
「どーぞー」
聞こえてきた声に、どこかほっとしていた。ドアを開けると、窓際の一番後ろの席に、一人の生徒が座っている。
悪い意味で有名な新入生のイサキだ。
「怪異部に入部希望っスか?残念ながら、うち非公式なんスけど」
へらへら笑いながらイサキが言う。俺は違う、と否定し要件を話した。
「つまり、一階女子トイレの奥にナナミさんが出た、と」
イサキはナナミさん呼びらしい。そうだ、と頷くと急に真面目な顔になって、俺を見る。チリッと感じたのは、なんだろうか。
「で、どうするんスか?」
「どうって……、うちの部員をだな」
先に話したことをもう一度、繰り返そうとして止められた。細い指が、首に絡む。
「嘘だ。……助けたいなんて思ってないくせに」
その言葉に息が詰まった。
「本当の要件は?」
にっこり。
無邪気な笑顔で問いかける。
「あ、……花子さん──否、アイツを…………」
そこから先の記憶が、俺にはなかった。
アイツを助けて欲しいとか、解放してやって欲しいとか、そんなことを言ったのかもしれない。違うことを頼み込んだのかもしれない。
ただ、頭に残っているのはイサキの言葉だけ。
「いいっスよ。ごりよーあざます」
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作者名:さっく。 | 作成日時:2019年4月22日 16時