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「開かないよォ!開けて、開けてっ!
先輩、部長!助けてよ!」
真木が叫ぶ。
ドアノブが激しく回る。
開けて開けて。助けて。開けて、早く。
その声の合間に、真木のものとは違う、別の声が混じっているように思えた。
それが笑い声だと気づいたのは、真木がドアを叩き始めてからだった。ドンッ、ドンと一定の速度で叩かれるドアの向こうから、ゲラゲラと笑う声が聞こえている。
ふと、「トイレの花子さん」という噂を思い出した。この学校のどこかにある、使用禁止トイレに住み着く女子生徒の霊のことだ。
花子と呼ばれているのは便宜上のもので、それはトイレの花子さん以外に
ナナミさん
ユキさん
ミチルさん
など、様々な名前が存在する。
その霊がトイレに居着いた、もしくは縛り付けられた理由というものは共通して──過去にトイレに閉じこめられ、出られなくなった女子生徒が心臓発作または持病の発作で亡くなったから、というものである。
まさか、真木が使ったトイレがその使用禁止トイレだと言うのか?
その噂は本当だったというのか?
未だ混乱する頭を叩き、俺は真木が入ったトイレの前に立った。入口の方で、藤原が壊れたラジオのようにゲラゲラ、ゲラゲラと笑っている。
「真木、いるんだろ。危ないから少し退いてろ!」
焦りからか、声が無駄に大きくなる。
返事はない。否、聞こえない。
「開けるぞ!」
真木が閉じこめられたトイレのドアに体当たりを食らわすと、それはいとも容易く開いた。
そのままの勢いで中に入ると
そこには蓋を閉じた洋式便器が佇んでいるだけだった。
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作者名:さっく。 | 作成日時:2019年4月22日 16時