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そこではっと我に返り、慌てて空き教室の中に飛び込んだ。高く積み上げられた勉強机の前には、黒いドレスを着た少女以外に誰もいない。
少女はゆっくりと振り返ると、俺を見て無邪気な笑みを浮かべる。
黒く、艶のある髪から覗く大きな目。病的に白い肌によく目立つ赤色が彼女が赤薔薇であると言うことを物語っている。
『ネェ、白、シロロ、ロ』
そいつの小さな口から、ノイズがかった声が発せられた。バグだらけのゲームみたいに、同じことを繰り返したかと思えば、ガチッと固まる。
──本当にバグっているのかもしれない。
自分のせいとは言え、ぽっと出の噂がいきなり人を喰って怪異化したのだ。まだバグってるうちに喰えば楽かもしれない……と左手を口元に持って行こうとしたその瞬間だった。
風を切る音が聞こえた──と認識したその瞬間、俺は床に横たわっていた。じわじわと肉体を侵食する痛みに、頭が混乱している。
「ヒッ、……ヒュッ」
息が上手く出来ず、絶えず吐き気が襲う。痛い、何処が痛いかも分からないのに身体が悲鳴をあげている。
『白、ろバラ、ロバ、白……』
聞こえてくる声が、近くなる。ぼやけた視界に黒い何かがゆらゆら揺れている。
『ネェ、白薔薇……シラナイ?』
気を失う寸前、聞こえてきたのは男とも女ともつかない複数の声が混ざりあった不快なものだった。
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作者名:さっく。 | 作成日時:2019年4月22日 16時