鬼喰イ (ページ24)

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体育館倉庫を出て、校舎を走っている北校舎に繋がる渡り廊下に目が行った。周りを見回しながら歩く女子生徒が一人。

「サボりか……？」

初犯だろうか、そんなことを考えていると彼女の後ろを着いて行く影に気付いた。五、六歳くらいの子供とほぼ同じサイズの影が、ゆらゆらと揺れながら一定の距離を保ち滑っていく。

刹那、鼻をついた甘い匂い。

影に気付く前は何も感じなかった、怪異特有の匂いだ。吐き気がするほど強いその匂いに、理性という糸が緩み始める。

──喰いたい。早く、早く。

頭の中は剥き出しになった本能が叫ぶ、「美味しそう」という言葉でいっぱいになっていた。あの影から目が離せない、あの少女がどんな末路を迎えるかをこの目で確かめてみたい。
俺の足は自然と彼女を追いかけていた。土足であることも気にせず、渡り廊下に上がり込むと北校舎へ向かう。

人間は影に向かって「あっち……」、「多分こっち」と言って先導していく。

「……ここ、で見たと思う」

彼女が足を止めたのは、空き教室の前だった。
離れた場所で様子を窺っていると鍵のかけられていないドアを開け、中に入っていく。

遠くの方で、ぼそぼそと何か話しているのが聞こえる。目を閉じ、耳を傾けると『白薔薇』や『女の子』と言う単語が聞こえてきた。

あの影は矢張り怪異だったらしい。あとは、あの影が人間を取り込んでしまえば──と妄想し始めたその瞬間だった。

『あぁぁぁぁぁぁぁっ！』

幼い少女の絶叫が響いた。