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3. ページ13
瞼を上げると、そこはいつもの夢の世界だった。遠くに向かうにつれて、濃厚な黒から薄い紫へと変わる空。金粉をはいたように星たちが瞬いているのも変わらない。
私は何度、この夢を見たのだろう。ちらりと自分の服装を見てみれば、変わらず真っ白なドレスを身にまとっていた。
ウエディングドレスと見紛うほど美しく、豪華なデザインではあるが、それは愛を誓った男の隣で着るためのものではなかった。
遠くに馬の嘶きが聞こえる。
逃げろ──と脳が叫んでいるが、私は動こうとしなかった。
悪あがきのつもりだったのかもしれない。けれど、それがどのような結末を生むかも分からない。逃げ惑った末に、絶望の中死んでいくよりは逃れられない運命を受け入れて死ぬほうが幸せなのかもしれない。
身体が震えている。
じくじくと痛み出す腹部を押さえながら、蹲る。吐き気がする、怖い。
砂をふむ音が聞こえる。
ああ──彼がくる。
かたく目をつぶったその時、聞こえてきたのはイサキくんの声だった。
「こいつ、俺の彼女だから」
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作者名:さっく。 | 作成日時:2019年4月22日 16時