【三代目】その先も【男主】 (ページ4)

今日:17 hit、昨日:0 hit、合計:21,490 hit

＊ページ4

「いやー、高嶋くん。やーばいっすね」

衝撃的な挨拶の後、彼等BADWOLFがどういう音楽を作ってどういう世界観を醸し出すのか、それが俺達にマッチするのかってのが全くもって未知数だからって事で取り敢えず一曲披露してもらおうって事になったんだけど。
さっきから岩ちゃんが煩いの何のって。

「言ってもアウェーじゃないすか。そんな中であの発言はすごいっすよねー。健二郎さん嫌いなタイプじゃないですか？先輩風吹かせらんないし」

「おいコラ岩田コラ。聞こえてんねん！」

「あれ？すいません」

「そんなニヤニヤしながら謝っても何も響かんねん！誰が先輩風吹かす系兄貴や！」

「いや誰もそんな事言ってないです」

岩ちゃんだけじゃなかったわ。お前もか健二郎。
健二郎は巻き込まれたとはいえ煩いものは煩い。
一応仕事だからコレ、ちゃんと弁えなさいよって意味も込めて俺のスマイルを二人に送ると途端に静かになるのもどうかと思う訳ですけど。
それでも未だ少し興奮気味の岩ちゃんから今度こそちゃんとした耳打ちで教えてもらったのはあの最後の強気な発言の真意。

どうやら、喰い尽くすってのはあのバンドがコンセプトに掲げてる物らしい。最初は隠す事もなく不安そうにしてた岩ちゃんは既に高嶋くんに興味津々って感じで文明の利器グーグル先生を使って調べたみたいだ。いや調べるの早ぇな、とかちゃんと情報として出てくるって事はやっぱそれなりに有名なんだな、とか色々思う事はあれど、今俺は思わず感嘆して漏れそうになった空気を飲み込むのに必死なんです。

「(岩ちゃんじゃないけど…あんなアウェーな場所でちゃんと自分達の色を主張してきたって事ね。…格好いいじゃん)」

そこは素直に称賛だな、と。やっぱ少なからずみんな警戒はしてて、そんな中であんな自信持ってハッキリ自分達の色を主張出来る奴なんて中々居ないと思ったから、その時点で俺が高嶋に対する見方はほんの少し変わってたかもしれない。
少なくとも、生意気だけど、面白そうな奴だって興味は湧いたよ。

俺と同じ考えの人もチラホラ居るみたいで、最初の時みたいな固すぎる空気は少し柔らかくなってたように思う。何人かは興味ありげに高嶋くんの事見てるし。
この空気を作ったのが、あの若くて華奢な一人の男なんだと思うとやっぱすげぇなって、思っちゃったよね。