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「 …離して 」
『 やだ 』
「 やだじゃなくて…、! 」
彼の手を強引に振り払おうとすればするほど、腕の力は強くなっていって。
彼の吐息がすぐそばで聞こえて、わたしはわかりやすく頬を赤く褒めた。
『 僕、あんま恋には自己中にならんとこって決めてるんすよ 』
「 へ、へえ 」
『 …でも無理やわ。Aさんかわいすぎるから 』
そのストレートな言葉にも、胸を打たれたのは事実。
道の真ん中でバッグハグされて、きゅんきゅんしてるわたしがいる。
こんなのわたしらしくないって分かってるのに。
『 迷惑なんて気にせぇへんし 』
「 …ええ 」
『 Aさんの怒った顔、ほんまかわいかった。
…おれ、もっと知りたい。Aさんのいろんな表情見てみたい 』
え、小瀧くんってまさか、ドMなの?
だめだ、彼にはもはやなに言っても変わらない。
『 おれ、もっとAさんのこと知りたい 』
時々主導権が彼になって、一人称が「おれ」になるの本当にやめてほしい。
ドキッとするし、年上感が出てときめいてしまう。
「 …可愛くないし、わたしのこと知ってもなんの得にもならないよ 」
『 なるんすよ。
てか、なるようにします 』
「せやから」ってわたしの首に顔を埋めた小瀧くん。
その吐息に肩に力が入って、一層心臓が高鳴った。
『 明日、僕とデートしてください 』
「 …ええ? 」
「どうっすか」って小瀧くんが顔を覗き込んでくるけど、迷うことなんてない。
答えはとっくに決まっている。
「 …無理かな 」
『 ええっ、!!そこは「はい」の流れですやん 』
「 ちょ、声大きいって 」
耳元で叫ぶから、慌てて引き離した。
小瀧くんも油断していたのか、今度はすんなり逃げることが出来た。
彼がわたしの前に立って、自然とわたしも彼見上げた。
ぱちりと目が合う。
小瀧くんがわたしを見る目は、相変わらずキラキラしていて。
『 …へへ、また新しい顔見れた 』
「 …はあ? 」
『 また明日 』
満足気に笑って、風のように去っていく彼を見て、
「変なの」と首を傾けた。
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りぃな - この作品、めっちゃ好きです。小瀧くんの一人称がおれになるときが…何て言うか、やばいです (2020年10月24日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - えむさん» ありがとうございます〜!!遅くなってしまってすみません! (2019年1月22日 23時) (レス) id: dbd2bbadc1 (このIDを非表示/違反報告)
えむ - なんか、花男っぽいですね!たのしいです (2018年9月7日 20時) (レス) id: 3391b849bb (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - ミルキァさん» ありがとうございます〜!!アンチがいるんですけどそう言ってくださる方がいるだけで嬉しいです!(;;)ありがとうございました!! (2018年8月27日 19時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - (さら)さん» ありがとうございます!続きは書く予定はありません(;;) (2018年8月27日 19時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楓花 | 作成日時:2018年6月10日 23時