空っぽな鉢に愛を注ぐ

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誕生日当日。

図ったかのような休日に、今日だけは感謝したい。


明日になったら彼女は帰ってしまう。




今日1日くらい誕生日プレゼントをもらってもいいか、なんて思っていると、
準備をした彼女が部屋から出てくる。




黒のスキニーにハイネックニット。

ノーカラーコート。とシンプルなのに、

大人っぽくて、少しドキっとする。




ほとんどしない化粧も、丁寧にでもナチュラルにされていて、





口からぽろりと、「モデルさんみたい。」と声が漏れた。





「え？祐希、煽てても何も出ないよ？//」


「え？あ、今喋ってた？」


「しゃべってた(笑)」


「はず(笑)」






とりあえず、観光したいという彼女に合わせて、
午前中はゆったりと街中の有名な場所を訪れる。




市内にある大聖堂は多くの人で賑わっていて、
Aさんは、まじまじとそれを見上げながら、
イタリアっていいね、と笑った。





「そう？」


「祐希ももっと観光すればいいのに、」


「俺がナメクジだって言ったの、マサさんとAさんでしょ。」


「そうだけど(笑)」






ほんと腰重いなぁ、って彼女は笑う。


恋人のようなデートをして、
近くのショップで、
ほんと、何欲しいの！って催促する彼女に、

えーなんて言って俺はずっと誤魔化していた。






夜になって、今日はお店じゃなく私が作るね。って
張り切っていたAさんが俺の家で料理を作る後ろ姿を見て、
結婚したら、こんな感じかな、なんてくだらないことを考える。




この幸せな時間が一生続けばいいのに、




なんて、思いながら彼女が作ってくれた料理を食べ、

他愛ない話をした。

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