弱り目に。 ページ7
※ 流血シーンあり。ご注意ください。
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サッチさんから放たれたふたつのナイフは、真っ直ぐに私の方へと飛んできた。
薄暗い照明に、キラリとナイフが反射する。鋭い切っ先を向ける銀色に、思わず目を瞑った。
次の瞬間、私に銃を押しつけていた男の体がビクリと跳ね、体の拘束がとけた。
「ぐあぁっ！！」
ひしゃげた声がふたつ耳に飛び込んでくる。
突然拘束の取れた体は、バランスを失ってそのまま床に落下し、尻餅をついた。
とっさについた手が、べちゃ、と嫌な音を立てる。生温い、ぬるりとした感覚。
それが血だと認識した瞬間、ひゅ、と掠れた息が喉から漏れた。
じわじわと木目の床に広がっていく血が、目の前を赤く染めていく。
ぬるりとした生温いそれから逃げたいと思うのに、私の体は鉛のように重くて動かなかった。
ナイフが頭に突き刺さったまま、床に倒れる二人の目は開いたまんま。ばちりと目が合った気がした。
もう、息なんてしてないのに。
『いや、だ……』
叫びたくて、怖くて、逃げたかった。
『どうしよう、死んじゃった…』
呆然と、呟く。
人の死をこんな風に直接見るのは初めてだった。
さっきまで息をしていた人がこんな風になるというのは───たとえ自分を脅かしていた存在だけど、でも。
カタカタと体が震えるのが分かる。指先から急激に温度を失って、冷たくなっていく。
「A！」という声に顔を上げて、『うそ、』と声が漏れた。
サッチさんの白いコック服は、腕の部分からじわじわと赤く染まっていっている。
サッチさんが撃たれたのだと認識するまでに時間はかからなかった。
サッチさんが、腕から血を流している。コックさんなのに。みんなを幸せにする料理を作れる人なのに。コックにとっての手は、大切なものなのに。
私を、生かそうとしたから。
私が死ねばよかった。そうすれば、何も起きなかった。この人達は死ななかったかもしれないし、サッチさんが怪我することもなかった。
なのに、私が、生きてたから。
生きる価値もないのに。
きっと、この人達の方がずうっと生きたかったはずなのに、みんなとの時間を幸せなんて思ってしまったから。
私が生きたいと願っていたら安堵の息を吐いたのかもしれない。だけど、私は───
( なんで、生きてるの？ )
呆然と、べちゃりと血に濡れた両手を見つめた。
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xxxxxers(プロフ) - 本当にワンピースミリしらでタグにトリップと書いてあったので興味本位で見てみたんですけどなんとこんなに面白くて考えさせられるお話だとは！！！もう本当にあとがきで書いてあることって事実だなーって思って涙が止まりませんこんな素敵なお話ありがとうございました (4月27日 22時) (
レス) @page50 id: 13f4a23a05 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
