舟を焼く。 ページ32
「A、なんで……！」
鎖に繋がれていることを忘れたように、エースが立ち上がろうとして、ガシャンと派手に音が鳴る。
傷が痛むのか、激しく咳き込んで再びずるりと座り込んだエース。
『ごめんエース、どうしよう、怪我が！』
牢屋の格子で、伸ばした手は届かない。
「おれのことはいいんだ、それよりA、何にもされてねェか？！痩せただろ、飯食ってんのかよ！」
『ちょ、馬鹿じゃないの？！そんなのどーでもいいよ！』
「二人とも大きな声出すなら帰るぞ！」
その言葉にびく、と二人とも肩を揺らして慌てて声を抑える。……なんか最近人に対して言えるようになってきたな。ちっとも喜ばしい事じゃないけど。
『……なんで、私なんかのために、』
エースがぎゅ、と眉をしかめる。
「お前が、そういう奴だからだよ。……Aが、全部、一人で抱え込もうとするから、おれたちを頼らねェから。」
意味わかんない。私は人に頼ることが苦手なのも自覚してるけど、
『私にそこまで思われる価値はないよ。なのになんで……』
「…自分で気づいてないかもしれねェけど、Aは自分で思ってるよりずっと───」
エースの声が、電伝虫のプルプルプル、という音に遮られる。それを迷いなくとったガープさんは、しまったという顔をした。
"「ガープゥゥゥゥ！！！」"
受話器の向こうから大音量の怒声が聞こえてくる。この声は、元帥さんか。
"「やはりガープ貴様、監視…ゴホン、保護対象の少女をエースのところに連れていっとるな！何してるんだァ！」"
「お前がわしに隠してたのが悪いんじゃ！すぐ連れて帰るからそう怒るな！」
時間が無い。そうだ、エースに会えたら確認しなきゃいけないと思ってたことが。
牢屋の前に、しゃがみこむ。小さな声で、問う。
『ねえ、エース………生きたい？』
ああ、本当にひどい怪我。拷問かな。何が正義、海軍だって非人道的じゃない。
突然の質問に、エースは少し躊躇って答えた。
「前言ったろ、おれは生きることを望まれてねェ。だけど、もし、叶うなら……おれは、もう一度、海で仲間と笑い合いてェ…！」
『そっか、分かった。』
それだけで十分だよ。
すくっと立ち上がる私を見上げるエースに、笑って口パクで "大丈夫" と伝える。
「A、何考えて…ッ！」
まだ電話してるガープさんの近くまで行ってすぅ、と息を吸う。
『見損なったよエース。バイバイ。』
ごめんね、エース。
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アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (
レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
いぶき(プロフ) - 凄く感動しました、エースとオヤジを生存させてくれてありがとうございます (2023年3月23日 7時) (レス) id: d33577c241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
