覆水盆に。 ページ3
明らかに古そうな本は、黄ばんでパリパリに固まっていた。
パラリとページを捲ろうとして、しおりが挟まってあるのに気づく。
そのページを恐る恐る開いて、目に飛び込んできた言葉に、息が詰まる。
『異世界人の、利用価値…？』
そのページだけやけに読み込まれたように薄汚れている。それが余計に、胸の不安を煽った。
ばくばくと激しく鳴る心臓を抑えるように大きく息を吐き、目を逸らしたくなる文字に、目を当てる。
────彼らは、全てを知っている。
『…は？』
１行目に書かれてあった文字は、まったく予想外のものだった。
───予言者であり、この世界の全て、未来までをも知っている。それ故に、その力を求めようとする者は多い。
( いやいやそんな力もってないし…。この本ガセ？)
だけど、その次に補填されるように書いてあった言葉に、今まで書いてあったことの意味を知った。
───異世界人は、たいてい「ワンピース」という言葉を真っ先に発する。それが何を意味するのかは謎である。
(もしかして...！)
一番最後を開くと、この本が出版されたのは２０年以上前だった。
たしか、海賊王ゴールド・ロジャーが処刑されたのは、２０年前だとマルコさんが言っていた。
そして、海賊王が残した宝…それが、ワンピースだったはず。そして、私の世界で超有名な、漫画のタイトル。
ということは、昔にも、私のような人間はいたんだ。日本からこの世界に飛ばされた人間。
なら未来を知っていたというのも納得する。だって、あの漫画には全てが書いてあるのだから。
私はあいにくちゃんと読んだことがないのだけど───もしここに来たのが、ワンピースオタクだったモモなら、どうだっただろう。
彼女は、この世界のすべてを知ってることになる。未来も、登場人物の過去も、弱味も。
それは、多大なる脅威になるのではないか？
それに気づいた瞬間、全身に冷や水を浴びせられたような、寒気がした。
─── 異世界人は貴重であり、利用価値が高いとされる。
そう締めくくられたそのページ。
『…、そっかぁ…』
パタン、と本を閉じた。
戦えもしない小娘を受け入れて、船に載せて、守ろうとしてくれる理由、それは。
( そうだよなぁ…そんな甘いこと、あるわけないじゃんか。)
はは、と乾いた笑いが口から漏れてゴト、と手から本が落ちる。
その瞬間、木製のドアが派手な音を立てて蹴り破られた。
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xxxxxers(プロフ) - 本当にワンピースミリしらでタグにトリップと書いてあったので興味本位で見てみたんですけどなんとこんなに面白くて考えさせられるお話だとは！！！もう本当にあとがきで書いてあることって事実だなーって思って涙が止まりませんこんな素敵なお話ありがとうございました (4月27日 22時) (
レス) @page50 id: 13f4a23a05 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
