雨夜の月。 ページ11
目を開けた瞬間がばっと勢いよく起き上がる。
冷や汗と嫌な動悸が止まらない。
喉がカラカラに乾いて飲み込む唾の痛みに眉をしかめ、水はないかと暗闇に少し慣れた目であたりを見渡す。
そのとき、不意に目に入った窓の外の真っ黒な海。
それに誘われるようにふらりとベッドから起き上がると、ついた足が床を軋ませた。
横のベッドに寝ているリザさんは、すうすうと寝息を立てていて、起きる気配はない。
裸足のまま静かにドアを開けて、所々にオレンジのランプが光る廊下に体を滑り込ませた。
ぺたぺたと私の歩く音だけが廊下に響く。
いつだって人の声で溢れていたこの場所は、不気味なくらい静まり返っていた。
甲板に続くドアが開け放たれていたのをみてそこから人気のない甲板に出ると、夜の海の肌寒い風が頬を撫でた。
真っ黒い海をただぼんやりと眺める。夜の海と、昼の海は別物みたいだ。真っ暗で底が見えないどこまでも続く黒い波は、正直どこか怖い。
───「貴方は死ねないよ」
うすうす、わかってた。
だってあまりにも色々と偶然ができすぎていた。
海に飛び込むのも成功した試しがないし、海王類にまで助けられたし、挙句の果てに今日の銃は不発弾ときた。
( あのひとたちは、死んだのに。)
手にこびりついていた赤は、すっかり綺麗になっていたけど。ぬるりとした感触は忘れられそうにない。
あぁ、サッチさんは大丈夫だっただろうか。
ほかのこの船のみんなは？敵は？
武器と武器を持った人間の集団が対立して戦う時、犠牲ナシなんてことはありえない。みんな無事だといい。敵も誰も死んでないといい。……いや、そういえば私のせいで死んだんじゃないか。
ああ、もう、ほんとに───
『つかれたな 』
疲れた。思考をするだけで苦しくなる。マイナス思考？考えすぎ？死ぬことはは逃げ？知ってる。私は逃げたいの。死は、解放への逃げ道。
別にこの世界が嫌なんじゃない、この世界の人達が私は好きだ。
だけど、私が私である限り、私はこの苦しみから逃れられない。だってどうしようもないじゃない、私はこの世で一番私が嫌いなのだから。
でも、それさえも許されないというのならば。
『どうすればいいの… 』
生きる価値はないのに、生きろなんて。
そのとき不意にサッチさんの声が聞こえた。
段々近づいてくるふたつの足音と声。
生きてたとほっとするのと同時に今会うのは気まずくて、近くの物陰の裏に身を潜めた。
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アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (
レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
いぶき(プロフ) - 凄く感動しました、エースとオヤジを生存させてくれてありがとうございます (2023年3月23日 7時) (レス) id: d33577c241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
